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2019年9月16日 (月)

Science デンチャープラーク微生物叢の群衆解析と義歯ケアー ②

 続き:

 

2. 従来の微生物叢研究手法とその問題点

 

 デンチャープラークを含め、従来の微生物叢研究の手法は、採取した検体を各種人工培地に接種し、様々な培養条件下で形成されたコロニーを分離したのち、形態学的・生化学的性状を手掛かりに菌種を同定する「培養法」であった。この培養法に依存した微生物叢解析は、大変な労力を伴い煩雑であるだけでなく、得られるデータには以下の問題がある。

 

1) 難培養性菌は対象外

 培地で増殖可能な菌種のみが解析対象となるので、あらかじめそのような菌種を想定し、限られた種類の培地を準備する。しかし現実には培養困難な菌種はたくさん存在し、それらは検体中に存在していても培地では増殖せず、検出できない。

 

2) 実際の微生物構成を反映していない

 複数検体中の既知菌種の検出率・検出頻度をもとめるには問題はない。しかし微生物構成に関しては、培養条件に合った生菌が優先的に増殖し、菌種ごとに増殖バイアスが生じるため、本来の組成とはかけ離れた菌叢データが得られがちである。

 

3. 16S リボソーム RNA 遺伝子のクローン化と塩基配列解読による細菌の検出

 

 16S rRNA は細菌のタンパク質合成装置であるリボソームの構成要素で、染色体 DNA から転写された mRNA とリボソームが出会いタンパク質合成を開始するために必須の RNA である(図 略)。これをコードする染色体上の遺伝子(16S rDNA)には以下に示す特徴がある。

 ①すべての細菌が16S rDNA を染色体上に保有する

 ②生命維持に必須の遺伝子なので変異が起きにくい

 ③全菌種に共通の「保存領域」と、菌種ごとに多様性に富む「可変領域」とが交互に並ぶ構造をとる(図 略)

 これらの特徴を利用し、塩基配列が分かっている保存領域に設定した共通プライマーを用いて PCR を行なえば、配列情報が不明なものも含めた全細菌の可変領域を一括して増幅できる。たとえ微量の検体であっても、そこに細菌の染色体 DNA が存在すれば、菌の生死や培養の難易度、既知か未知かにかかわらず、数時間で丸ごと(網羅的に)増幅できるのである。このような分子遺伝学的方法は培養法と比べると煩雑さがなく、網羅性は高く、菌種による増幅バイアス(PCR増幅効率の偏り)は制御可能である。しかし初期の16S rDNA 解析では、PCR 増幅された個々の 16S rDNA クローンがどの系統分類に属するのかを決めるために、クローンごとの面倒なシーケンス作業を要し、これを並列処理能力が乏しいサンガー型シーケンサーを使って行っていたのでは限界があった。

 

 

 

 

 

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