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2019年9月19日 (木)

Science デンチャープラーク微生物叢の群衆解析と義歯ケア ⑤

続き:

 

6. ポスト NGS 時代におけるデンチャープラーク研究の動向と新知見

 

 Shiらは2016年、デンチャープラーク細菌叢のメタ16S 解析を属レベル以下で試みた最初の研究成果を報告している。義歯使用者のデンチャープラークと残存歯デンタルプラーク細菌叢を義歯性口内炎の有無で分けて比較した結果、「口内炎あり」で構成比が増えるのは Fusobacterium 属、逆に「口内炎なし」で優勢なのはレンサ球菌属であった。しかしデンチャープラークの細菌構成は個人差が大きく、別人のデンチャープラークよりも同一個人のデンタルプラーク細菌構成との類似性が高いことから、デンチャープラークの細菌組成はデンタルプラークの影響を受けていると結論している。また FCR による Candida 検出率を比較したところ、義歯性口内炎ありグループで90%に対し健康グループ(口内炎なし)では50%に留まり、Candida の関与の大きさが窺える。

 O'Donnell らは、デンチャープラーク中に占める Candidaの増減と正の相関を示した細菌属は Lactobacillus で逆相関を示したのは Fusobacterium だったと報告している。

 我々の研究グループは、附属病院補綴科でメインテナンス中の外来患者6人が使用する総義歯または残根上義歯を対象にして、義歯表面および残根等からプラークを採取し、V3- V4 領域のメタ16S 解析を行った。その結果、義歯研磨面部ではレンサ球菌や Actinomyces 等の通性嫌気性菌が優勢で、義歯粘膜面では TM7 や Selenomonas、Prevotella 等の偏性嫌気性菌の構成比はやはり患者ごと変動が大きかったが、全体的な傾向としてレンサ球菌、Veillonella、Actinomyces、Prevotella、Leptotrichia の5菌属の構成比が高かった。

 また、慢性歯周炎に関連の深い Porphyromonas と Tannerella も低構成比ながら検出されたが、同一患者の残根やインプラントからも同じ菌属が高い構成比で検出されており、デンチャープラーク細菌叢は歯面プラーク細菌叢の影響を受けていると考えられる等、前述の先行研究を基本的に支持する結果が得られている。

 一方、Candida が鏡検的に認められた検体では一部の球菌属の構成比が高い傾向を認め、さらなる定量解析により歯面およびデンチャープラーク検体中の Candida とレンサ球菌属の構成比が有意に正の相関を示すことを見い出した。 Candida albicans と一部の口腔レンサ球菌について in vitro での共生関係を示唆する先行研究があり、我々のデータはそれを in vivo で裏付けていると思われる。Candida と共生あるいは拮抗関係にある常在細菌が見つかれば、カンジダ症の予防・治療に有用な新しい方法の開発に応用できるかもしれない。

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