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2019年9月20日 (金)

Science デンチャープラーク微生物叢の群衆解析と義歯ケア ⑥

続き:

 

7. メタ16S解析の課題

 

 NGSを用いたメタ解析は、細菌叢の全体像を手軽に把握する上で大変有用であるが、その限界と課題もある。

 

1) 分解能の問題

 16S遺伝子内部の短い部分配列をターゲットにしているため分解能が乏しく、系統分析で確かなのはせいぜい属レベルまでとされている。中には種レベルまでヒットする菌種もあるが、データの信頼度はかなり低下するので注意が必要である。

 

2) コピー数の問題

 ゲノム中の16S遺伝子コピー数は、菌種により異なる。コピー数が多い菌種は少ない菌種よりも構成比が高めに出ることになり、組成解析の精度に影響する。ただしコピー数が分かればデータ補正は可能である。

 

3) PCRバイアスの問題

 16S 遺伝子内のどこを標的配列に選ぶかによって菌種ごとの増幅バイアスが生じ、得られる細菌構成比にも影響する。現状では腸内細菌叢解析での知見から比較的バイアスが生じにくいとされる V3- V4 領域を選ぶことが多い。

 

4) 細菌と真菌を一括解析するのが困難

 真菌と細菌の群衆解析は、それぞれ異なる標的を増幅するために別々に行われている。細菌用のユニバーサルプライマーは16S rDNA の可変領域を標的に、真菌用のユニバーサルプライマーは18S rDNA や ITS 領域 (internal transcribed spacer) を標的として用いられており、互いに共用できない。

 デンチャープラークのように真菌と細菌が混在する微生物叢を研究対象とする場合、細菌・真菌共通のプライマーがあれば、NGS で両者一括解析が可能になるので大変便利だ。実は2014年に 16S/18S の相同配列領域からユニバーサルプライマー候補を設計し、細菌と真核生物の同時検出を試みた例が報告されている。しかし真核生物として増幅された配列の多くが 18S rDNA とは無関係な配列だったらしく、真菌・細菌双方で菌種カバー率が十分高く増幅バイアスは少ない共通プライマーを見つけるのはなかなか難しそうである。他にもリファレンスデータベースの充実と統合などの環境整備も必要になる。日本の研究機関ではその試みがすでに始まっている。

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