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2019年9月 9日 (月)

感染症と人間(5)―③

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 そんな微生物の惑星を新たな自然体系の中で再分類したのが、カール・リチャード・ウーズであった。ウーズは、アメリカの微生物学者で、遺伝子情報に基づく生物分類の先駆者となった。それまでの生物分類は、基本的には、18c.にカール・フォン・リンネが行った種の形態学的類似と相違を基にした分類体系が用いられていた。

 そこに、物理的性状や代謝といった化学的性状が考慮されたものが分類の基礎となっていた。しかし、ウーズが行ったことは、リボソーム RNA による分類で、それとは全く異なる方法だった。リボソーム RNA とは、遺伝情報を翻訳して生命に必須のタンパク質へ変換するリボソームを構成するリボ核酸である。そのため、すべての生物に存在し、大きな機能的制約を受ける。

 一方で、その一部に変異しやすい部位もあり、その部位の遺伝子配列は生物によって異なる。その事実を発見し、それを比較すれば、生物の新たな分類体系ができると考えたのがウーズだった。

 結果は、極めて示唆に富むものであった。それまでの生物分類は、動物界、植物界、菌界等といった「界」を最上位に置く分類だったが、ウーズは、リボソーム RNA の解析から、自然は「界」の上位に三つの「ドメイン」を持つと考えた。そのドメインは、真正細菌、古細菌(アーキア)、真核生物に分類される。

 細菌と古細菌がそれぞれ一つの大きなドメインを構成する一方、わたしたちヒトやクジラなどを含む動物や植物は、粘菌やアメーバー、菌類、コケ類や藻類と同じ、真核生物という同じドメインの住人となる。

 古細菌は、進化上古い微生物で構成されており、メタン存在下や高濃度塩環境下、100度を超える高温や、高酸性下といった、他の生物にとって厳しいと考えられる環境下でも生息する。大気中の窒素固定など地球の物質環境にも重要な役割を演じていることが分かってきた。地球上の生物重量の1/5を占めるともいわれる。

 真正細菌は、わたしたちが一般にイメージする細菌を含み、さらに、真核生物の大半は、粘菌やアメーバ―、菌類といった微生物が占有する。それはまさに、わたしたち人類が、微生物の惑星における小さなシミのようなものなのかもしれないということを示す。それが20c.以降の新たな自然体系となっている。

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