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2019年10月12日 (土)

原発の本当のコスト ②

続き:

 

■ WG.のコスト検証の問題点と限界

 

 コスト検証WG.による報告には問題もある。最大の問題は、「モデルプラント」の想定そのものである。「2014年モデルプラント」」の想定は次のようなものであった。

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  建設費=福島原発事故以前に建設された直近四基の原発の平均値37万円/KW

  追加的安全対策費=福島原発事故以後に講じられた安全対策費用の平均値 一基あたり601億円

 

 つまり、福島原発事故以前に建設された原発と同じ原発を、2014年に建設し、追加的に安全対策を講じると想定している。しかしながら、福島原発事故以前のタイプの原発を建設し、追加的に安全対策を講じるというのが、はたして現実的と言えるのだろうか。むしろ、設計段階から根本的に安全性を高めた原発を建設すると考えるほうが自然ではないか(注)。 (注)コスト検証では、2020年、2030年時点での発電コストも計算された。他の電源は、建設費用や燃料費用等の想定で変更が加えられている

    が、原子力は基本的に「2014年モデルプラント」のままである。――2020、2030年においても「2014年モデルプラント」のような原発

    を建設することが想定されている。

 原子力発電に対する安全規制は、強められることはあっても弱められることはない。特に、福島原発事故以降、安全規制は世界的に強化されている。その代償として建設コストは上昇する。原子力発電においては、安全性と経済性とはトレードオフ(二律背反)の関係にあり、安全性が高まれば、経済性は悪くなる。事実、欧米では、原子力規制が強まった結果、建設費用が2~3倍に上昇。例えば、イギリスに建設予定のヒンクリー・ポイント原発についての欧州委員会の2014年の資料をみると、出力330万kwに対し、建設費用は245億ポンドとされている。単純に当てはめれば、建設費単価は2014年当時で7424ポンド/kw、当時の為替レート(1ポンド=170円程度)で126万円/kwである。これは、日本の「2014モデルプラント」の3.4倍に相当。この高コストのために、イギリスでは差額決済取引(CfD:Contract for Difference)が導入、電力市場価格と発電コストの差額を政府が保証した。

 原発の建設コストが上昇していることは、2019年初めに、日立製作所が、イギリスのウェールズ州で計画していたウィルヴァ原発の建設を凍結(事実上の撤退)する原因にも。このプロジェクトは、日本の原発輸出路線の中核の一つであり、日本政府も後押ししていた。しかし原発を建設するための費用は3兆円に上がり、イギリス政府が過半の出資ができないため折り合いがつかず凍結にいたった。日立製作所が同プロジェクトを再開する条件は国有化であるという(『日本経済新聞』2019/01/24)。原発の建設コストが上昇している事例は、フランスのフラマンヴィル原発3号機、フィンランドのオルキルオト原発3号機や、東芝の原発事業崩壊につながったアメリカのボーグル原発など、枚挙にいとまがない。

 コスト検証WG.の計算では、安全性の高い原発を想定していないので建設費の高騰という点が考慮されていない。WG.の議事録を精査しても、この点について深く検討していた形跡が無い。福島原発事故事故直後の混乱期ならともかく2015年時点であれば当然精査すべきであったし、遅くとも2018年のエネルギー基本計画策定時には、原発のコストの再計算を行なわなければならなかった。藪蛇になることを恐れた政府が、あえてコスト計算を行なわなかったのではないかとすら思われる。

 次に、当時の状況からすれば新たに考慮すべき点がある。それは、2015年の検証以降、追加的安全対策が進んだことである。多くの電力会社が、再稼働のために新規制基準への適合性審査を申請している。審査に合格するために、電力各社は巨額の追加的安全投資を行なっている。この費用は公式には発表されていないが、新聞各社の報道や社長記者会見等からおおよそその追加的安全投資額を知ることができる。

 電力各社から発表される数値や、『日本経済新聞』『朝日新聞』等で報道された数値を合計すると、安全対策工事費は全国で4兆6000億円ほどになっている。適合性審査の申請を行なった原発は25基であるから、1基あたり2000億円弱である。これもまた資本費の増大をもたらす。「2014モデルプラント」には、この現実が反映されていないのだ。

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