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2019年10月 6日 (日)

Science ~材料科学の立場から考える~ ⑤

続き:

 

4. セラミック冠の臨床経過

 

 オールセラミック冠と陶材焼付金属冠の臨床経過について5年間生存率に関して多数文献をまとめた報告がある。それによると、5年間生存率(口腔内で機能し続けている割合)の平均は陶材焼付金属冠が94.7%、オールセラミック冠が種類によって異なるが平均90.7~96.6%である。2ケイ酸リチウム系ガラスセラミック冠は96.6%と最高の生存率を示している。ジルコニア冠(高密度焼結ジルコニア冠)の平均は91.2%(95%信頼区間範囲82.8~95.6%)である。

 ジルコニア冠については、報告によって94%の生存率を示すが、べニアセラミックスのチッピングの発生の見られない症例の平均は86.1%(95%信頼区間範囲75~96%)とするものもある。これらの臨床経過報告は前歯部と臼歯部を合わせた報告である。特に2ケイ酸リチウム系ガラスセラミック冠の中で最高生存率を示したのは、この材料が主として前歯部に使用されていることに起因している。

 9年後の臨床経過は、前歯部では100%生存率を示し、それに対して臼歯部では94%と減少したと報告されている。臼歯部では生存率が減少するものの94%であったことは、ガラスセラミックが臼歯部においても機能できることを示している。

 統計学的にジルコニア冠と陶材焼付金属冠の生存率は有意差がないと報告され、いずれもメタルコーピングやジルコニアコアの破壊は認められていない。臼歯部ジルコニア冠は前歯部に比べてべニアセラミックス層のチッピングの割合が多いが、陶材焼付金属冠と比較すると有意差なしとする報告も出ている。

 これらの臨床経過報告から見えるのは、ジルコニア冠は陶材焼付金属冠と匹敵する臼歯部材料であり、5年後の生存率は90%以上を示すものである。しかしながら陶材焼付金属冠5年間生存率の95%信頼区間が94.1~96.9%(区間幅2.8%)に対してジルコニア冠の95%信頼区間は82.8~95.6%(区間幅12.8%)である。

 信頼区間幅の大きさはデータ信頼性の一つの指標であり区間幅が小さいほど、そのデータに対する信頼性が高いと考えられる。

 この観点からすると、ジルコニア冠の5年生存率は平均値では陶材焼付金属冠と同程度であるが、陶材焼付金属冠と比べて生存率データの信頼性は低いといえる。換言すれば生存率データのばらつきが大きい、つまりジルコニア冠は、症例や技術的要因によって口腔内での生存期間が陶材焼付金属冠よりも影響を受けやすく予測しにくいといえる。

高透光性ジルコニア、積層型ジルコニアに関しての総括的な臨床経過報告はみられない。ジルコニアは陶材焼付金属冠と比べてその応用の歴史が浅いことから、材料選択と適用症例など不明な点もある。臼歯部の審美補綴材料としては、口腔内での信頼性を重視するならば、陶材焼付金属冠の選択も考慮してもよい。接着操作も含めてこれからの技術開発によりジルコニア冠の信頼性は向上すると思われる。

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