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2019年10月15日 (火)

原発の本当のコスト ⑤

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■国家による原発延命策は許されない

 福島原発事故とその後の新規制基準、安全対策により、原子力発電の経済性は悪化し、競争力を失っている。原子力開発初期に建設された安価な原発は、かろうじて経済性をもつと考えられるが、それは、旧いタイプの原発を稼働させることになるからである。最新鋭の原発に比べればリスクが相対的に高くなることは否めない。

 原発の新規建設については、すでに欧米諸国では、原発を建設するのに1基あたり1兆円を超える資金を必要とするほど建設コストが高騰している。今後、発電コストは上昇こそすれ、下がることは予想されていない。年々コストが上がるような技術が社会に受け入れられることはもはやない。

 これに対して、再生可能エネルギーは急速に価格を低下させている。太陽光や風力は、いったん費用回収してしまえば、メンテナンス費用程度のコストで運用できるようになり、限界コストゼロ(ほぼゼロ)になる。競争性のない原子力発電所は、新規の発電所の建設が見込めないから、ピークアウトし、衰退・消滅に向かうだろう。

 2030年には、総括原価方式の電気料金が撤廃される。これによって、原発をもつ電力会社は、原子力発電にともなう追加的費用を自ら捻出しなければならないし、放射性廃棄物の処分や廃炉にむけた取り組みを行わなければならない。原子力発電の将来は多難と言わざるを得ない。通常の経済活動であれば、多くの企業が撤退してしかるべき「お荷物」である。

 にもかかわらず、経団連は、早期の撤退を促すどころか、このような環境の下であえて原子力発電事業を維持するするための制度を構築するよう、政府に要求している。開発初期段階ならいざしらず、すでに円熟期にあるはずの技術に手厚い措置を講じよと要求することに道理は全くない。原子力発電事業が国家の支えなしに生きていけない国家寄生型エネルギーであることを経団連は表明していると言える。

 市場で自立できないのであれば、そのようなエネルギーは社会的に不安だ。国も経済界も、できるだけ早く賢明な判断をすべきである。

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