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2019年10月 7日 (月)

Science ~材料科学の立場から考える~ ⑥

続き:

 

5. CAD/CAM 用コンポジットレジンの特徴と臨床経過

 

 2014年の歯科診療報酬改定により、CAD/CAM により製作されたコンポジットレジン冠が小臼歯部の健康保険適用となってからCAD/CAMレジン冠の使用が普及しはじめた。さらに、2016年には条件付きではあるがCAD/CAMレジン冠の大臼歯への健康保険適用となったことから、今後はCAD/CAMレジン冠はさらに普及すると予想される。国内を中心として多数のCAD/CAMレジン冠用材料が市場に出回ってきている。

 CAD/CAMレジン冠材料の物性については日本歯科材料工業協同組合規格によって要求項目が定められ、市販製品は物性値に差があるものの、すべてこの要求基準を満たしている。この材料は、マトリックスレジンとフィラーをあらかじめ高温高圧下で重合させることにより、重合率が高くかつフィラー含有量も増加させたものである。

 その結果、高強度で安定した材料となっている。コンポジットレジンとしては優れた機械的性質を示すが、臼歯部審美材料としてみると当然ながらジルコニアやガラスセラミックス系材料よりも劣っている。

 フィラー含有量は重量の60~80%と言われる。しかしながら80重量%フィラーのコンポジットレジンであっても、フィラー密度(2.6~4.2g/㎤)とマトリックスレジン密度(1.1~1.2g/㎤)からフィラーの体積比率を計算すると53~63%程度。つまり、レジンブロックの体積の半分ないし半分弱は機械的強さの小さいレジン成分から構成されていると考えてよい。この構造的な特徴が、セラミックスよりも強さ、硬さ、弾性係数が小さく、吸水性が大きいことの原因の一つ。

 臼歯部審美材料としては機械的強度が小さいが、矢谷らは、各種CAD/CAMレジンで大臼歯冠を製作して、咬合面に垂直に荷重を負荷してCAD/CAM冠の破裂強度を測定して耐久性を報告。冠破裂強度は水中浸漬前では1900~3200N(約190~320kgf)であり浸漬30日後は900~2500N(約90~250kgf)となった。

 水中浸漬によって強度劣化が大きく認められる材料もあう。天然歯の大臼歯部の平均咬合力は565Nと報告されている。CAD/CAMレジン冠材料は水中浸漬によって強度劣化傾向がみとめられるか、平均的な咬合力に対してレジン冠が十分な厚みを有していれば臨床的には口腔内で破壊されることのない強度を持っている。口腔内で5年経過を想定した条件での実験でも強度に大きな減少は見られなかったと報告されていることから、CAD/CAMレジン冠材料自体は十分な厚みが確保できるならば臨床適用に大きな問題はないと推測される。   <その1>

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