« 世界で競争力を失う原子力発電 ⑥ | トップページ | 「小型モジュール炉」 ① »

2019年10月22日 (火)

世界で競争力を失う原子力発電 ⑦

続き:

 

新設プロジェクトで遅延・中止の動き

 全世界で建設中の原子炉は2018年12月の時点で54基ある。既設の原子炉の数(451基)と比べて1割強にとどまる。仮に建設中の原子炉がすべて5年以内に運転を開始したとして、年間に10基程度のペース。最新の原子炉は1基あたり発電規模が相対的に大きくなっているとはいえ、老朽化で廃止になる多数の原子炉を補うことはできない。

 しかも各国の新設プロジェクトの進捗を見ると、当初の計画から大幅に遅延するケースが相次いでいる。建設中の原子炉は安全性の強化を目的に開発した「第三世代」が多くを占める。第三世代の建設期間は5年以上かかり、なかには当初の予定から10年以上も遅れているプロジェクトがある。特に技術的な問題が要因になっているだけに深刻だ。建設期間が長引けば、それだけコストも増える。既設の原子炉で採用している第二世代と比べると、第三世代の原子炉の建設費は2倍~5倍の水準に膨らんでいる。

 コスト面の問題から、プロジェクトを中止する事例が増えてきた。米国では東部のサウスカロライナ州で2基の原子炉を新設する工事が2013年に始まったものの、コストの超過により2017年に中止に追い込まれた。英国でも日立製作所が2基の原子炉の新設プロジェクトを進めていたが、経済性を理由に2019年1月に計画凍結したことは記憶に新しい。このほかに台湾では1999年に開始した2基の原子炉の建設が20年後の現在も完了しておらず、中止に追い込まれる可能性が高まっている。

 それでも原子力発電の復活を模索する動きは、日本を含めて現在も続いている。経済性と安全性の改善を目指した次世代型の原子炉の開発がその一つである。しかし世界中のどの国においても、電力の安定供給の面で原子力発電が重要な役割を担う余地は小さくなっている。老朽化した原子炉の運転延長や新型炉の開発に固執することは、原子力産業にとっても得策ではない。現存する危険性を可能な限り早く縮小するために、廃炉と廃棄物処分に注力すべきだ。そこには長期にわたる事業機会と社会的な使命がある。

 原子力による電力供給がなくなっても、気候変動に対応する電力システムは自然エネルギーを最大限に利用しながら、経済性と安全性に優れた各種の技術の組み合わせで実現できる。自然エネルギーを主体にして電力の供給システムを構築する国が欧米を中心に増えてきた。すでにカナダ、スウェーデン、デンマーク、ポルトガルでは、国内で消費する電力の50%以上を自然エネルギーで供給いている。このうちデンマークとポルトガルには、商用の原子力発電所が一つもない。

 天候によって電力の供給量が自然エネルギーと、状況に合わせて供給量を調整しにくい原子力は、そもそも相いれない組み合わせだ。気候変動の抑制に向けて脱炭素化を推進するためには、技術的な観点からも自然エネルギーと原子力の並存は望ましくない。デンマークやドイツなど欧州の先進国は、脱炭素化に原子力発電は不要と判断した。日本においても原子力発電の撤廃が正しい選択である。

 

« 世界で競争力を失う原子力発電 ⑥ | トップページ | 「小型モジュール炉」 ① »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事