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2019年10月17日 (木)

世界で競争力を失う原子力発電 ②

続き:

 

米国で赤字の原子力発電所が増える

 特に経済性の問題が顕著に表れているのは米国である。研究機関のブルームバーグNEFが調査した結果によると、米国で原子力発電所を新設した場合の発電コストは、電力1KW時あたり20円を超えている。

 これに対して陸上の風力発電は平均で約4円、太陽光発電とガス火力発電は平均で約5円である。いまやコスト競争力に圧倒的な差がついている。

 現時点で米国内に建設中の原子炉は2基しかない。完成しても他の発電方法と比べて競争力はなく、投資回収はむずかしい。

 新設する場合だけではない。運転中の原子力発電所の採算性も厳しさを増している。米国では原子力発電設備の償却期間が日本と同様に15年に設定されていて、すでに投資回収を終えた発電設備が多い。それでも日常の運転に必要なコストが風力・太陽光やガス火力の発電コストを上回るようになり、電力の取引市場で苦戦を強いられている。いくつかの州では原子力発電に補助金を出して支えているのが現状だ。

 2017年には全米61か所の原子力発電所(合計99基の原子炉)のうち、半数以上の34か所が赤字に陥った。もはや安定した収益が見込めなくなり、新たに12基の原子炉が2025年までに運転を終了する。しかも10基は運転可能な期間を大幅に残しているにもかかわらず、廃止を余儀なくされた。

 今後さらに風力・太陽光の発電コストは低下する見通しで、運転終了を迫られる原子炉の数が増えることは避けられない。

 米国の50州のうち、カリフォルニア州とハワイ州は2045年までに州内の電力を自然エネルギー100%で供給する目標を掲げている。カリフォルニア州の場合には厳密に言うと、炭酸ガスを排出しないクリーンエネルギー100%が目標であり、原子力も対象に含まれる。ただし州内で運転中の原子力発電所は1か所(2基)しかなく、2025年までに運転を終了することが決まっている。

 現在のところ新設の計画もないため、2045年の100%の目標達成に原子力発電が貢献する可能性はほとんどない。

 

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