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2019年10月11日 (金)

原発の本当のコスト ①

「世界 7」より、筆者 大島堅一(龍谷大学政策学部教授)さんは述べている。コピーペー:

 

■原子力発電の経済性評価をめぐって

 

 原子力発電は、長い間、他電源に比して安く、経済的であるとされてきた。このとき、一体何をもって安いとするかは、政策形成の際に深く論じられてこなかった。福島原発事故以前に原子力発電の経済性について検討されたのは、2004年の総合資源エネルギー調査会の電気事業分科会コスト等検討小委員会が最後であった。総合資源エネルギー調査会は、エネルギー政策の具体的政策を検討する政府の審議会であるが、このとき計算した主体は電機連合会(以下、電事連)で、検討小委員会は、計算結果をオーソライズしたにすぎなかった。

 2004年の計算では原子力発電のKW時当たりの発電コストは5.3円とされた。この数値を根拠に、水力、LNG、石炭、石油といった既存電源に比べて安いということが強調されるようになる。電事連が計算を行なっているのにもかかわらず、いったん政府の審議会を経由したことで、政府のお墨付きをもらった電事連は、自らの計算結果を政府の審議会のものとして大いに宣伝した。

 このときの発電コストは、それを得るために用いた計算式や想定、データの重要な部分が非公開であった。2004年以前ではあったが、ある新聞記者が情報公開制度に基づき原子力発電のコスト計算の根拠資料を入手したことがある。筆者(大島)は、請われて、その資料を検討した。当該資料は具体的数値の部分が黒塗りになっていたり、数ページにわたって黒色で塗りつぶされていたりしており、詳しい検討ができるものではなかった。かような状況であったから、原子力発電に関する経済性について政府や事業者が述べるときには十分な注意が必要である。

 

■エネルギー政策における原子力発電の経済性評価

 

 日本のエネルギー政策の中長期的な方向性は、エネルギー政策基本法に基づき数年おきに策定される「エネルギー基本計画」で示される。最新の第五次エネルギー計画は2018年に作られた。同計画では、福島原発事故後、安全性を第一にするとはされたものの、原子力が低廉で、二酸化炭素を排出しないため環境適合的で、安定して電気を供給するエネルギー源であると位置づけられている。特に、低廉であるという説は、本当かどうかはともかくとして1950年代からつづく言説の一つであり原子力発電推進の強力な根拠となってきた。

 2018年のエネルギー基本計画の「運転コストが低廉」という記述の根拠は、2015年に、総合資源エネルギー調査会の長期需要見通しを小委員会発電コスト検証WG.が出した報告書である。この報告では、原子力発電の発電コストは、「2014モデルプラント」で10.1円/KW時以上とされた。ここでは原子力のみ「以上」とされている。これは、原発事故費用が今後も増大することが見込まれるため、最低限の値しか示しえないからである。本稿では「以上」とすべきところ、これを省略して述べる。

 「2014年モデルプラント」とは、2014年時点で新規に建設する場合のコスト計算のためのモデルである。これが40年間、一定の設備利用率で運転したときに、KW時あたりどの程度の費用がかかるのか、をあらわす値が「発電コスト」として発表された。このように一定期間(この場合40年間)に一定の設備利用率で運転した場合に見込まれるKW時あたりのコストを「平準化発電コスト」(LCOE: Levelized Cost of Electricity)といい、国際的にも広く使われる指標となっている。

 コスト検証WG.の「平準化発電コスト」の特徴は、原発事故の費用が考えられていること。また、技術開発や立地自治体への交付金等の政策経費も原子力発電の費用として捉えられていることにある。これらは、日本が、福島原発事故を引き起こしたゆえに評価されるようになった項目だ。

 また、2011年の福島原発事故後に設置されたコスト等検証委員会以来、計算方法、根拠は広く公開されうようになり、一般にも利用することが可能になっている。計算過程をトレースできるエクセルファイルもダウンロード可能なかたちで公開されている。これらの点で、日本のコスト計算には先進的な面も含まれる。エクセルファイルと報告書を読み込めば、多少煩雑であっても計算過程を精査できる。

 

 

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