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2019年10月26日 (土)

「小型モジュール炉」 ④

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 福島第一原発事故以前に、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が出資したテラパワー社がそのコンセプトを発表、東芝に技術協力を求めたことで注目を集めた。東芝は、当時4S 炉というモジュール型のナトリウム冷却高速炉(SFR) 開発を進めていることを公表していた。4S はスーパー・セーフ、スモール、シンプルのそれぞれの頭文字。電気出力は1万KW または5万KW と小さく、原子炉は燃料交換なしで30年間稼働。発電が終わったあとは、原子炉ごと取り替える、いわば「カートリッジ式原子炉」だ。

 他の形式では、核燃料は交換式のものが多いが、従来型よりも交換頻度が少ない。また、いずれのタイプも原子炉内部は自然対流によって冷却され、原子炉に何らかのトラブルがあった場合でも、外部電源や外部冷却水が不要、出力や温度の異常上昇は起こさず、放射性物質の外部漏洩もしないというふれこみである。

 小型で安全性が高いため、オンサイト発電にも向くという。離島や送電網が未整備の地域はいうまでもなく、大型工場に設置すれば廃熱も利用できてエネルギー効率が高まる、さらに都市郊外に設置すればマイクログリッドやスマートコミュニティを構築できるなどと、そのメリットを説く。もちろん、先のニュースケール社の炉のように、多くを組み合わせれば大型発電所にもなる。

 そして何より、小型モジュール炉は、出力調整が可能なのだという。従来の大型炉は、臨界に達したあと、トラブルや地震等がない限り、フル出力で約1年間稼働し続ける。したがって安定したベース電源に向いているが、逆に言えば融通が利かないということになる。再生可能エネルギー懐疑派は、風力や太陽光は出力が変動し不安定だと主張するが、需要のほうも変動するので、原子力発電だけでは対応できない。需要変動に合わせるためにはやはり天然ガスなどの火力発電、水力発電(揚水を含む)を組み合わせるしかないのである。

 ところが小型モジュール炉は、需要に合わせてフル出力以下でも運転できるのだ。だから、小型モジュール炉によって変動する再生可能エネルギーの弱点を捕らえるという理屈が主張されるようになった。かって再生可能エネルギーは原子力発電の敵だったが、小型モジュール炉によって、「原子力と再生可能エネルギーとの共存」という、新たなモデルが考え出されたのである。

 とはいえ、小型モジュール炉の中では核分裂連鎖反応によって莫大なエネルギーとともに「死の灰」が生み出されるのだが……。

 「再生可能エネルギーを原子力と同等程度にまで伸ばす」という方針と、再生可能エネルギーは順調に伸びているが原発再稼働や新設はいっこうに進まないという現実を合わせて考えると、推進する人たちが小型モジュール炉に託す願いがうかがい知れる。何としても原子力産業を維持したい、そして、長期需要見通しに掲げた目標値を下ろすわけにいかないのであろう。

 もちろん、そこには実利もある。このエネルギー基本計画を受けて、2019年度予算の概算要求に小型モジュール炉などの新型炉開発支援に10億円が盛り込まれている(これに基づき、「社会的要請に応える革新的な原子力技術開発支援事業補助金」の公募が2019/06/14、を締切に実施中)。

  

 

 

 

 

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