世界で競争力を失う原子力発電 ③
続き:
▬ フランスは2035年までに50%へ縮小
世界で最も原子力発電の依存度が高い国はフランス。国全体の発電量の70%以上を占めている。最近の8年間でフランス国内にある原子炉の数に変化はないが、年によって発電量が変動していて、近年は減少傾向が見られる。発電設備の老朽化が進んで、機器の故障による運転停止の頻度が増加しているためだ。それに加えて気候変動で夏に熱波が発生して、原子炉の冷却に必要な水を確保できない問題も起こるようになった。
原子力発電は1か所で大量の電力を作れる点が特徴。予定外の運転停止は電力の安定供給に大きな支障をきたす・機器の故障や異常気象による運転停止はフランスに限らず、米国など数多くの国で頻発している。原子力発電所の多くは大量の冷却水を確保するために沿岸部に建てられていて、今後は気候変動による海面上昇の影響も想定する必要がある。
フランス政府は原子力発電の縮小に乗り出し、2035年までに国全体の発電量に占める比率を50%まで低下させることを決めた。現在58基ある原子炉のうち14基を廃止の計画。代わりに自然エネルギーの比率を2030年までに40%へ引き上げる(2018年の時点では24%)。
フランスに隣接するドイツでは2018年に自然エネルギーの比率が40%を超えたほか、スペインでは38%、イタリアでも35%まで上昇している。イタリアは原子力発電を完全撤廃し、ドイツも2022年までに撤廃する。同様にベルギーも2025年までに原子力発電を撤廃することを決めている。原子力に依存し過ぎたフランスは自然エネルギーの拡大に出遅れ、欧州の電力市場で不利な競争を強いられる可能性が高まる。
欧州ではアイルランド、オーストラリア、デンマークが法律で原子力発電を禁止。スイスは原子炉の新設を禁止、既設の5基が運転終了した時点で原子力発電がゼロになる。欧州以外ではオーストラリアが原子力発電を禁止。韓国は建設中の5基を含めて合計29基の原子炉を保有するが、運転延長や新設は認めない方針だ。運転期間の終了に伴って段階的に原子力発電を撤廃していく。
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