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2019年10月29日 (火)

エピジェネティクス ―生命科学の新しい必修科目― (1) ①

「人間と科学」第305回 仲野徹(大阪大学大学院生命機能研究科時空生物学・医学系研究科病理学教授)さんの医学小論を載せる。コピーペー:

 

 エピジェネティクスという言葉を聞いたことがありますか? 多細胞生物の発生を説明するために考え出された概念です。聞いたことがない、なんとなく難しそう、などと尻込みしないでください。なにしろ、さまざまな生命現象や病気を理解するためにエピジェネティクスの考え方は必須なってきています。それに、基本的な事柄さえ押さえておけば、それほど難しくはありません。まず第1回は、エピジェネティクスがどのような現象に関係しているか、から話を始めていきます。

 

■ ゲノムだけでは決まらない

 全遺伝子情報を意味するゲノム。その解析が猛スピードで進み、医学や生物学に大きなインパクトを与えつつある。しかし、ゲノムだけですべてが決定されているわけではない。

 ラバという動物をご存じだろうか。雄のウマと雌のロバの雑種である。では、ケッテイはどうだろう。この聞き慣れない動物は、雌のウマと雄のロバの雑種。ラバは粗食に耐えてよく働くが、ケッテイはそうでもない。他にもいろいろな違いがある。

 不思議だとは思われないだろうか。ラバもケッテイも、ゲノムあるいは遺伝子でいえばロバが半分、ウマが半分だ。しかし、その性質は大きく違う。すなわち、ゲノムだけで形質が決定されてはいないのだ。

 こういった現象の背後にあるのがエピジェネティクスである。「 DNA の塩基配列の変化を伴わずに、染色体における変化によって生じる、安定的に受け継がれうる表現型」と定義されるのであるが、これだけでは何のことかよくわからないだろう。その分子基盤は次回へ、ここではごく簡単に「遺伝子あるいはゲノムに上書きされた情報」としておきたい。

 先の例でいえば、精子には精子型の上書きが入り、卵子には卵子型の上書きが入る。そのために、雄のウマと雌のロバの子と、雄のロバと雌のウマの子とでは表現型が違ってくるのである。

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