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2019年10月13日 (日)

原発の本当のコスト ③

続き:

 

■既存の原発のコストを試算する

 

 では、現時点で、既存の原発はどの程度の原発コストになったと評価するのか。ここでは、コストWG.が提示した方法に基づき、既存原発の発電コストを計算してみることにする。――留意すべきは、コスト検証WG.の方法に基づく以上、「平準化発電コスト」を評価するものであるということである。それゆえ建設する時点での評価であること、また、建設費については当時の金額をそのまま用いていることに留意されたい。その上で、本稿では、以下の独自の考え方を使って、電力各社の現実にできだけ即した形で原発コストを計算することにした。

 ①追加的安全対策費のアップデート

 追加的安全対策費は、電力各社発表または報道に基づき、最新のものを用いる。これによって、新規制基準に適合するために必要となっている費用を考慮する。但し、これらの発表された数値は、具体的にどの原発に要した費用なのか明確にされていない。そこで便宜的に、電力各社が原子力規制委員会に対して適合性審査を申請した原発において安全対策を講じるための費用であるとした。原発会社によっては、複数の原子炉の適合性審査申請をしていることがある。その場合は基数で除し、平均をとる。

 今後も、追加的安全費用は増加することが見込まれる。というのは、テロ対策等のための「特定重大事故等対処施設」(以下、特重施設)が完成しない場合、原発の運転停止を命じる方針を、2019年4月に原子力規制委員会が示したからである。元来、新規制基準において必須とされた特重施設の設置が5年間猶予され、さらに2015年には猶予の起点を本体施設工事認可時へと変更されていた。

 事実上二回も特別措置を設けること自体大問題であり当時も批判が多かった。今回の決定では猶予期間の再延長をしないことが明らかになった。再稼働をしようとすれば、電力各社は数百億円規模とみられ、これも安全対策費用を引き上げる。また、特重施設の完成が間に合わず停止しなければならない原発も多いと考えられている。そうすれば次に述べるように、発電コストが上昇する。

 ②停止期間の考慮

 コスト検証WG,の計算では、モデルプラントの運転期間を40年としていた。現実には、福島原発事故後 、長期間にわたって原発が停止することになった。日本全国で9基の原発(大阪3、4号機、高浜3、4号機、伊方3号機、玄海3、4号機、川内1、2号機)が再稼働したものの、再稼働した原発も数年の停止期間がある上に、他の原発は停止したままである。通常の定期検査であれば政府の計算でも考慮されているが、この間の停止期間は、通常の定期検査ではなく、また、無視できない長さになっている。さらに訴訟の影響で停止した伊方3号機のようなものもある。これについても考慮する必要がある。

 (注)この事は、日本経団連が2019年4月に発表した「日本を支える電力システムを再構築する――Society 5.0実現に向けた電力政策」で、運転できなかった期間を、運転期間40年から控除し、その分運転できる期間を延長するよう要求していることからもわかる。もちろんこのような要求に原子力規制委員会は屈してはならない。

 そこで、本稿では、既存原発の停止期間を考慮し、発電量をその分減じることにする。また、原発の運転開始から数えて何年目で停止したのか、その時期もまた平準化発電コストに大きく影響することから、各発電所の停止時期についても考慮する。これによって日本の原発が、これまで十分な安全対策をとらなかったゆえに停止せざるを得なくなっている現実を費用面で評価することが可能。

 一般に、運転期間が40年より短ければ総発電量が少なくなるから、KW時あたり発電コストは上昇するのだ。

 ③再稼働時期の想定

 2019年5月現在、既存原発は28基(建設進捗率93.6%の島根3号機を含めれば29基)にすぎず、数でみるとピークの半分近くになった。このうち9基は再稼働にいたっていない。これらの原発のうち、再稼働する原発が何基になるかははっきりしない。そこで、本稿では、平準化発電コストの計算値を保守的に見積もる(つまり原子力発電を有利に計算する)ために、適合性審査を行なっていない発電所も含め、2020年に再稼働するものと想定する。

 ④燃料費の想定

 コスト検証WG.の計算では、燃料費(核燃料サイクル費用含む)は1.5円/KW時となっている。だが、電力各社の有価証券報告書をみると、実態としては、1.5円/KW時より安価であるようである。そこで本稿では、福島原発事故以前の10年間(2001~10年度)の平均値を電力各社別に用いることにした。燃料費は発電所ごとに公開されていないため、当該電力会社では同じ燃料費とした。これによって、電力会社間の違いを把握できるだろう。

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