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2019年11月 9日 (土)

日米FTA (失うだけ―)⑨

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■この危機をどう乗り越えるか

 国内農業生産への影響で重要なのは複合的影響である。国内政策や過去の貿易の自由化の影響で、すでに農業生産構造の脆弱化が趨勢的に進んでいる。そこに一層の自由化が上乗せされる。これまでの趨勢に新たな自由化の影響を加味すると、牛肉・豚肉の自給率は20年後くらいには10%台になりかねないとの試算もある。輸入農水産物は安いと言っているうちに、エストロゲンなどの成長ホルモン、成長促進剤のラクトパミン、遺伝子組み換え、除草剤、イマザリルなどの防カビ剤と、これだけでもリスク満載で、健康を犠牲にするならば、これは安いのではなく、これほど高いものはない。

 日本で、十分とは言えない所得でも奮闘し、安心・安全な農水産物を提供してくれている生産者をみんなで支えていくことこそが、実は、長期的には最も安上がりなのだということ、食に目先の安さを追求することは命を削ること、子や孫の世代に責任を持てるのかということ。健康被害が増えてから、国産の安全・安心な食料を食べたいと思っても、自給率が1割になっていたら、もう選ぶことさえできない。すでにその瀬戸際までに来ていることを認識しなければいけない。

 日本の生産者は、自分達こそが国民の命を守ってきたし、これからも守るとの自覚と誇りと覚悟を持ち、そのことをもっと明確に伝え、消費者との双方向ネットワークを強化して、地域を食いものしようとする人々を跳ね返し、安くても不安な食料の侵入を排除し、自身の経営と地域の暮らしと国民の命を守らねばならない。消費者はそれに応えてほしい。それこそが強い農林水産業である。

 米国製戦闘機を言いなりに買い増すのが安全保障ではない。武器による安全保障ばかりで、食料の安全保障の視点が抜けているのは、安全保障の本質を理解していない。農業政策を農家保護政策に矮小化させてはいけない。食料・農林水産業政策は、国民の命、環境・資源、地域、高度・国境を守る最大の安全保障政策なのだ。

 高村光太郎は「食うものだけは自給したい。個人でも、国家でも、これなくして真の独立はない」と言ったが、「食を握られることは国民の命を握られ、国の独立を失うこと」だと肝に銘じて、国家安全保障確立戦略の中心を担う農林水産業政策を再構築すべきである。

 国民が求めているのは、日米のオトモダチのために際限なく日本の国益を差し出すことではなく、自分たちの命、環境、地域、国土を守る安全な食料を確保するビジョンとそのための包括的な政策体系の構築である。

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