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2019年11月 3日 (日)

日米 FTA (失うだけ―)③

続き:

 

■USTRが示した22項目と農産物協議の先行

 USTR(米国通商代表部)が示した交渉目的概要の22項目が提示した交渉範囲は、物品貿易、衛生植物検疫措置(SPS、具体的には、牛肉の輸入月齢撤廃、防カビ剤の表示撤廃、病害虫発生を理由にした生鮮ジャガイモ輸入解禁措置の一層の拡大、食品添加物・残留農薬の緩和など)、関税・貿易円滑化・原産地規則、貿易の技術的障壁、適切な規制慣行、透明性・公表・行政措置、通信・金融サービスを含むサービス貿易、物品・サービスのデジタル貿易と越境データ移転、投資、知的財産、医薬品・医療機器の手続き的公正性、国有・国家管理企業、競争政策、労働、環境、腐敗防止、貿易救済、政府調達、中小企業、紛争解決、一般規定、為替で、通常の包括的FTAないしEPAで、USJTA=US-Japan Trade Agreementと命名した。

 双方で呼称が異なる交渉も聞いたことがないが、言葉がどうあれ、やらないと言っていた日米二国間交渉をやっている事実は消せない。それにしても、「例外的にWTO整合的とみなす2ないし数ヵ国(地域)間協定=FTA」としてきた役所自身が、「FTAではないがWTO整合的である」(2019/04/23の議員会館での筆者(鈴木)の質問への回答)と言い続けているのには哀れと同情の念を禁じ得ない。

 ただし、4月半ばの交渉初会合では、農産物貿易協議を先行させる方向性が示された。ある程度は予想されたことだが、TPP11が2018年12月、日欧EPAも2019年2月に発効、1年目の関税削減が発動され、さらに4月には、ともに早々と2年目の関税が発動され、関税切替えの1月、2月、4月に、牛肉、豚肉、チーズ、ブドウなどの輸入が急増する一方、米国からの輸入が減少した。大幅な輸入増加は、関税削減の開始時点に輸入をずらした一時的効果もあるので、今後の推移を見極める必要があるが、輸入価格の1%の低下に対する輸入需要増加のパーセンテージが非常に大きいとすると、これまで、想定されていた以上に影響が、しかも、早期に襲ってくる可能性を考えて対策を検討しないといけないことを示唆している。まず、この点を押える必要がある。

 例えば、2018年12月~2019年4月までの前年同期比では、EUのチーズは1%の価格下落が6%の輸入増に、カナダ・ニュージーランド・メキシコからの牛肉輸入は、3国まとめると、1%価格下落が、8%の輸入増につながっている。ブドウはTPP11で17%の関税が即時撤廃され、2018年12~2019年4月で12%伸びた。特に、最大シェアのチリ産は、すでに日チリEPAで4.3%まで下がっていた関税が、チリのTPP11の批准が遅れているため撤廃されずに4.3%のままなのに60%も伸び、撤廃されたらどうなるのか、懸念が高まっている。

 「生鮮果実の関税撤廃の影響は全くない」としてきた政府試算の前提を完全に覆す現実がある。

 

 

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