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2019年11月 4日 (月)

日米FTA (失うだけ―)④

続き:

 

自動車のために差し出し、自動車も守れない

 「安倍政権は”経産省政権”ですから自分たちが所管する自動車の追加関税や輸出数量制限は絶対に阻止したい。代わりに農業が犠牲になるのです」と、筆者(鈴木)は2018/09/27に某紙で指摘した。「為替条項」(円安誘導して自動車輸出を増やしたとして是正を求められたり、報復されたりする)も脅かしの材料に使われている。自動車を所管する官庁は、何を犠牲にしてでも業界(天下り先)の利益を守ろうとする。各省のパワー・バランスが完全に崩れ、一省が官邸を「全権掌握」している今、自動車を人質にとられて、国民の命を守るための食料が格好の生贄にされようとしている。

 しかも、実際には、農や食を差し出しても、それが自動車への配慮につながることはない。米国の自動車業界にとっては牛肉関税が大幅に削減されても関係ないからである。本当は効果がないのに譲歩だけが永続し、全てを失いかねない「失うだけの交渉」になってしまう。米国は、TPP12で約束した、普通自動車の2.5%の関税は15年後から削減を開始して25年後に撤廃、大型車の25%の関税は29年間現状のままで、その間に日本が安全基準の緩和を着実に履行し米国車を不当に差別しなければ30年後に撤廃するという、不確かで気の遠くなるような合意さえ、日米FTAでは「なかったことにする」と通告してきている。

 

■「TPP以上は譲らない」は本当か 

 日本政府は「TPP以上は譲らない」と言うが、まず、TPP水準こそ大問題であり、その水準がベースラインとなることが異常である。そもそも米国は、TPPから離脱する際に「TPPでは不十分だから二国間協定でTPP以上を求める」と主張していた。しかも、TPP破棄で一番怒ったのは米国農業団体だった(裏返せば、日本政府の「影響は軽微」との説明は意図的で、日本農業はやはり多大な影響を受ける合意内容だったということが米国の評価からわかる)。

 せっかく日本から、コメ(従来の輸入枠も含めて毎年50万トンの米国産米の輸入を約束)も、牛肉も、豚肉も、乳製品も、「おいしい」成果を引き出し、米国政府機関の試算でも、4000億円(コメ輸出23%増、牛肉923億円、乳製品587億円、豚肉231億円など)の対日輸出増を見込んでいたのだから当然である。

 しかし、感心するのは、米国農業団体の切り替えの早さである。米国コメ団体もTPP離脱に怒ったが、すぐに発想転換し、二国間交渉で7万トンを15万トンに引き上げるよう要求し始めた。「第一の標的が日本」だとライトハイザーUSTR代表(その時点では候補)も議会の公聴会で誓約したのである。

 

 

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