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2019年11月 5日 (火)

日米 FTA (失うだけ―)⑤

続き:

 

■「TPP超え」は不可避

 米国の「失地回復」のためには、TPP11諸国と同じスピードの農産物関税削減で遅れが取り戻せないので、日米FTAでは、発効時点で少なくともTPP11諸国との差がなくなるよう、関税削減スケジュールが前倒しされる「TPP超え」は間違いない。

 また、日欧EPAではTPPを上回る譲歩をしているから、それを日米FTAに適用することはほぼ間違いないので、それだけでもTPP超えの可能性は高い。例えば、TPPでは米国の強いハード系チーズ(チェダーやゴーダ)を関税撤廃し、ソフト系(モッツァレラやカマンベール)は守ったと言ったが、日欧EPAではEUが強いソフト系の関税撤廃を求められ、今度はソフト系も差し出してしまい、結局、実質的に全面的自由化になってしまった。それが米国にも適用されると考えるのが自然である。

 しかも、TPPで米国も含めて譲歩したバター・脱脂粉乳の輸入枠7万トン(生乳換算)を、米国が抜けても変更せずに適用したから、オーストラリア、ニュージーランドは大喜びだが、これに米国分が二重に加われば、全体としてTPP水準をこえることもはじめから明らかである。つまり、TPP11合意に含めてしまった米国分を削除するなど不可能に近いのだから、日米FTAで米国に乳製品枠を設定した時点で「TPP水準にとどまる」ことはあり得ないのである。しかも、米国枠はTPPでの日米合意水準を超える可能性が高い。

 酪農は「クワトロパンチ」である。「TPPプラス」の日欧EPAとTPP11と日米FTAの市場開放に加えて、生乳の農協共販を弱体化する法改正まで行われた。将来不安も影響して、すでに都道府県を中心とした生乳生産の減少が加速しており、「バター不足」の解消どころか、「飲用乳が棚から消える」事態が起こり得る。かねて筆者(鈴木)はそう警鐘を鳴らしてきたが、2018年の北海道の惨事で顕在化した。消費者は北海道の停電による一時的現象と勘違いしているが、いつそういうことが起きてもおかしくない構造的問題なのである。

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