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2019年12月 1日 (日)

エピジェネティクス ―生命科学の新しい必修科目―(2) ①

「人間と科学」第306回 仲野徹(大阪大学大学院生命機能研究科時空生物学・医学系研究科病理学教授)さんの医学小論を載せる。コピーペー:

 

 エピジェネティクスの概念は難しい。とよく言われる。確かにそうかもしれません。そこで、ちょっと見方を変えて、分子レベルでどうなっているのか、即ち、概念よりも物質的に理解してみることを提案したいと思います。そのほうが間違いなくスッキリします。もっとややこしいのではないかと危惧されるかもしれませんが、その基礎はかなりシンプルなので、がんばって読んでみてください。それだけで、エピジェネティクスについての理解が飛躍的に進むことを保証します!

 

■DNA、遺伝子、ゲノム

 

 遺伝情報は細胞核内のDNA(デオキシリボ核酸)に蓄えられており、そのDNAは、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)という4種類の塩基が延々と連なった分子だ。化学的な性質から、AとT、CとGは対(塩基対)を作り、有名な二重らせん構造をとっている。また、ヒトの細胞には60憶もの塩基対があって、その総体、即ち、全遺伝情報がヒトゲノムである。

 遺伝子とは、DNAの塩基配列(=A、C、G、Tの並び方)によってコードされている遺伝情報のことで、ゲノムには約2万個の遺伝子が存在。もう少し分かりやすくいうと、遺伝子とは、このようなタンパク質を作りなさいという指令書のようなもの。あくまでも情報であって、個々の遺伝子が直接的に機能を発揮するわけではない。機能発現のためには、それぞれの遺伝子がコードするタンパク質が作らなければならない。このことを「遺伝子が発現する」という言い方をする。

 どの細胞も同じゲノムと遺伝子のセットを持っているが、それぞれの細胞において、すべての遺伝子からタンパク質が作られているわけではない。ある細胞では、限られた種類の遺伝子、主要なものとしては数千個程度しか発現していない。こういった状態をもたらすには、この遺伝子は発現させましょう、この遺伝子は発現させないでおきましょう、という指示が必要である。そのための「しるし」、もう少し厳密に言えば、遺伝子の発現を制御するためにゲノムに上書きされた情報こそがエピジェネティクスなのである。

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