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2019年12月29日 (日)

Science 歯髄幹細胞が広げる細胞治療の今後の展望 ④

続き:

 

5. 歯髄の全部再生も可能になってきた

 細胞移植による歯髄温存療法は、歯髄が残っている症例の部分再生だが、抜髄されている歯、――歯髄が残っていない症例の歯髄再生も可能になってきた。

 歯髄幹細胞を発見した米国のNIHグループの Songtao Shi 先生らは、歯根膜、乳歯および歯根形成中の根尖歯乳頭にいる間葉系幹細胞の存在を次々に発見した。その Shi先生は、2019年、ペンシルバニア大学歯学部の教授を辞めて、母国、中国の広州にある中山大学歯学部(Sun Yat-sen University)に移った。先日お会いした時に「米国では規制が厳しくて細胞治療を臨床に進めることは難しいから、母国に戻った」ことを聞いた。

 Shi先生らは、すでに中国で2013年6月から2014年12月の間に26人に歯髄細胞移植による歯髄再生治療を行っている。対象症例は、外傷で根未完成歯の歯髄が壊死した切歯で、対象患者は7歳から12歳の小児。患者自身の歯髄細胞(1×10 乗の細胞)を根管内に移植した。対照群は通法のアペキシフィケーションの治療を行った。細胞移植後12か月の電気歯髄診断で、すべての症例に陽性反応が認められ、CTで細胞移植群では移植後12か月で平均5mmの歯根伸長を観察した。アペキシフィケーション群では0.5mm程度であった。再度外傷した小児の再生した歯髄を除去した時の組織像示され、象牙芽細胞が配列していた。このように、歯髄の全部再生に成功しているのは、Shi先生と日本のグループである。

 愛知県大府市にある国立長寿医療研究センターと愛知学院大学歯学部の歯内療法学講座との共同による臨床研究では、患者自身の歯髄細胞による歯髄再生治療を5人の患者に行っている。驚くべきことだが、歯髄が残っていない歯でも、歯髄細胞を移植することで歯髄は再生できる。この治療法の課題は、細胞移植に必要な歯髄の細胞を採取するための健全な歯が必要なことだ。

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