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2019年12月25日 (水)

進化する A I 兵器 ⑥

続き:

 

◆若手ほど拒否感乏しく

 先の大戦で戦争協力した反省から、戦後日本のコミュニティは軍事研究への拒否感を一定程度共有していた。物理学者たちが反核運動を担い、研究成果の用途も考慮する「科学者の社会的責任」の重要性も確認してきた。ところが、今や世代間で認識に大きな差が広がっている。

 筑波研究学園都市地区に集積する国立研究開発法人や研究所の労働組合協議会が2016年に実施したアンケート調査(799人)では、軍事研究の是非について「進めるべき」と「進めるべきではない」が20~30代で拮抗するなど、若い世代ほど容認する傾向が見られる。「進めるべき」の理由は、「研究資金不足」に加えて「安全保障」や「科学技術の発展」など積極的動機も少なくない。

 日本天文学会が2018年、会員対象にした調査(800人)でも、防衛省の安全保障技術研究推進制度について20~30代で「賛成」が「反対」を上回った。天文学は赤外線検出器をはじめ軍事技術と深い関わりを持つ分野だ。

 賛成の旗振り役だった男性研究者に話を聞いた。彼は「研究者の自由を侵害すべきではない。偉いお年寄りの仲良しクラブが邪魔をしている」と訴え、軍事研究を規制する声明を出した日本学術会議を批判。大学や研究機関の任期付き雇用が増え、短期間の成果が求められる中で、若い学者たちは自分の研究しか見えず、社会的責任など考える余裕がないことも伝わってきた。

 ただ、怒りの矛先が、そうした研究環境を生み出している元凶ではなく、科学者組織である学術会議に向かう視野の狭さと屈折した心情が気になる。

 このような研究者の姿勢の変化を織り込んで、政府はAI技術などへの「重点的な投資」と「装備・技術分野の技術的優越を確保」(中期防衛力整備計画)すると強調しているのだ。

 LAWSをめぐる国連会合で、日本は「防衛省に開発計画はない」との立場を表明してきた。だが、120を超す条約加盟国の過半数が求める法的拘束力のある条約や議定書作りには背を向け続けている。当然ながら「AIを装備品に利用しない」とは一切言っていない。安全保障の専門家で、日本代表団の一員として国連会合に参加してきた拓殖大学海外事情研究所の佐藤副所長は「日本の安全保障環境を考えれば、物量ではなく軍備の効率化で対抗するしかない。相手がAIの軍事利用を進める以上、抑止力となるだけの備えは欠かせない」と指摘。防衛省関係者も「完全自律型や致死的なものでなければ開発しても構わない」と話しており、実際に研究を進めている。

 疑問に思うのは、東アジアの懸念国への「技術的優越」を謳う政府や防衛省の時代錯誤的な「上からの目線」だ。日本の科学技術力の低下が指摘されて久しい。2019年8月に文科省の科学技術・学術政策研究所が公表した国内外の研究動向を分析した報告書によると、2011年から16年にかけ、「計算機科学・人工知能」関連の論文数は、すべての主要国で増加しているのに対し、日本だけが減少していた。中国は論文の質量ともに躍進している。AI分野で日本が世界の「優越」国だと思っているなら、それは幻想だ。付け焼き刃で巨費を投じて軍拡競争に走るのは、科学技術政策を歪めるばかりか、国防の観点からも賢明ではない。早急に見直すべきである。

 科学技術が軍事と共に発展する時代は過去のもの。平和的に「科学技術創造立国」を目指してきた日本の研究者が、新たな軍拡への関与に危機感が乏しいのは残念でならない。今こそ「科学者の社会的責任」の自覚が求められている。

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