« 進化する A I 兵器 ④ | トップページ | 進化する A I 兵器 ⑥ »

2019年12月24日 (火)

進化する A I 兵器 ⑤

続き:

 

◆軍事に傾く研究者たち

 AIやロボット技術に対する軍事的関心の高まりに、世界の研究者は警戒心を露わにしている。グーグルが昨年、従業員の一斉反発を受けて、米国防総省とのAI開発契約の更新打ち切りを決めたことが話題となった。ドローンが空撮した映像を解析して識別精度を高めるAI開発に協力していたことを知った4000人の従業員らが反対署名などを展開したためだ。その後グーグルは「「人間に危害を与えることを目的とした武器その他の関連技術」などへのAI利用を否定する原則も公表した。

 この抗議に影響を与えたのは、2015年の「国際人工知能会議」で3000人以上の研究者が署名した公開書簡の存在だ。前述のラッセル博士やディープマインドのデミス・ハサビスCEOらが賛同した公開書簡は「現在のAI技術は数十年ではなく数年内に兵器利用を実現できる」と警鐘を鳴らした。2017年と2018年にもAIやハイテク企業の経営者たちや、欧州やカナダのAI協会をはじめとする研究者組織などが、LAWSの国際規制を求める書簡と「開発、生産、取引、使用に関与しない」とする誓約書を発表した。日本から署名したロボット企業「ハイボット」社長の広瀬茂男・東京工業大学名誉教授は「衝突回避など自動車の先進安全技術にもAIが使われるが、逆に使えば自律走行で人を狙うテロや犯罪もできるということ。研究者も対策の議論を深める必要がある」と訴える。

 しかし、実は日本からの賛同者は極めて少なかった。それは決して偶然ではない。例えば、日本の人工知能学会は2017年に倫理指針を策定した際、「人類への貢献」は明記したものの、軍事研究の是非については具体的に記されなかった。指針策定に携わった40代の著名研究者は条件として匿名で、千葉(私)取材に応じ、「あえて触れなかった」と言った。理由について「中国も北朝鮮も怖いけど、米国が守ってくれる保証もない。本音では安全保障に協力したい。でも、この件では何を言っても研究者に利点がない。沈黙するのが一番」と胸の中を明らかにした。

 さらに姿勢が問われる問題がある。千葉(私)は2017年、米軍から日本の大学研究者ら延べ128人に2010年度以降の6年間で総額8億円以上の資金提供があった実態を報道した。彼らは東京・六本木に拠点がある米空軍のアジア宇宙航空研究開発事務所(AOARD)、米海軍の海軍研究局(ONR)グローバル東京を通じて研究テーマを申請し、1人当たり最大4500万円を受け取っていた。その詳細が分かったのは、京都大学や大阪大学教授ら11人。

 研究テーマは、米軍が重視するAIやレーザー技術など。取材に応じた米空軍のダリル・メイヤー報道官(当時)は資金提供の理由として「米国だけでは手に入らない貴重な知見が得られるため」と説明した。

 研究者たちは何を考えて米軍資金を手にしたのか。米空軍から1000万円受領した京大情報学研究科教授の専門は、AIの改良に欠かせない会話など音声を柱とするビッグデータの収集・分析(データマイニング)と機械学習だ。人工知能学会の元学長でもある彼は「研究自体は平和目的。資金源が米軍だから問題だとは思わない」と言った。

 同じくAI分野で米空軍から3000万円を得ていた阪大産業科学研究所の教授は「大学から外部資金の獲得を求められている。研究成果は民間にも役立つ」と強調した。

 彼らがしているのは基礎研究であり、兵器開発そのものではない。だが、手にした研究資金の元手は米国民の税金でもあり、助成先を決めるのは米国防総省だ。特定の目的をもって提供しているのは明らかだろう。研究者の間には「科学技術は使い方の問題」という主張も根強い。

 しかし、そうであればなおさら軍の資金には慎重さが求められるのではないか。

« 進化する A I 兵器 ④ | トップページ | 進化する A I 兵器 ⑥ »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事