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2019年12月15日 (日)

A I 兵器―――異次元の危険領域 ⑥

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◆規制に向け、継続する課題

 さらなる問題は、仮に今後、人間の介在を義務づけるルールが合意されたとしても、何をもって人間が介在したとするのかだ。兵器システムの設計段階で人間が関与していればよいのか、あるいは、軍事作戦の現場で、AIが判断した攻撃手段を始動させるスイッチを人間が最後に押しさえすればそれでよいのか、考え方はまちまちでその定義は曖昧だ。そもそも鳴り物入りで導入されたAIが緻密に紡ぎだした作戦プランや戦術を、これはダメだと自信をもって覆すだけの力量がすべての現場指導官にあるのかも疑わしい。

 また、中国は、ジュネーブでの協議で、「自己推進化するAI兵器を規制の対象とすべき」と主張していたという。この主張の裏を返せば、自己進化しないものならば完全自律型であっても規制は必要ないともとれる。中国はLAWSの規制を骨抜きにすることを狙っているではと警戒する関係者もいる。

 今回まとまった報告書に対して、兵器の禁止を強く訴えてきた国際NGOなどの関係者の間には失望が広がっている。中には、CCWという既存の条約にこだわらず、もっと厳しい別の禁止条約の制定を目指すべきだとの意見もある。LAWSの出現を許さない厳格なルールが必要だと。しかし、問題は複雑だ。仮に、人の介在がまったくないまま人を殺傷するLAWSを禁止するより厳しい条約ができたとしても、アメリカやロシアなど開発国が条約に加わる可能性は極めて低く、実効性に疑問符が付きかねない。

 

◆覇権を握るための軍事技術

 科学者からの批判にさらされ、多くの市民に不安の種をまき散らしながらも、一部の国がAI兵器の開発を止めないのは、この軍事技術で優位に立つことが次世代の覇権の獲得につながるとみているからだ。

 戦争は、軍事技術の進歩とともに変化を遂げてきた。新たな軍事技術と戦い方を編み出した国家がいわばその時代の覇権を握ってきた。

 はじめ「石」や「こん棒」で戦っていた人類は長い年月を経て「鉄器」を手にする。紀元前1600年ごろ、鉄器で武装したヒッタイトがバビロン王朝を滅亡させ大帝国を築いた。そして、中世、「火薬」の発明が戦場での殺傷能力と破壊力に劇的な変化をもたらす。

 火薬の出現は、銃や大砲、爆弾の出現を促し、その技術と戦術をいち早く導入した者が戦場の勝利者となった。日本でも、鉄砲の伝来が戦の仕方だけでなく戦国の歴史そのものを動かした。「航空機」「戦車」「潜水艦」等の登場もその時代の戦い方を根本から変えた。人類史上最大の破壊力を生み出した「核兵器」は、まさに世界の歴史を変え、いまもその保有国は国際社会に大きな影響力を保持している。

 冷戦後の世界情勢を見ると、1991年の湾岸戦争は巡航ミサイル・トマホークに代表される精密誘導兵器が実戦に使用され、初めての「ハイテク戦争」と呼ばれた。そして、同じアメリカがその13年後に戦ったイラク戦争では、ハイテク兵器がさらに進化し、開戦からバグダッド陥落にいたるまでの大規模戦闘は当時、ハイテク戦争の完成形ともいわれた。

 衛星通信などで司令部と部隊をつなぐコンピューターネットワークと、精密誘導兵器を駆使して戦う戦争は、ネットワーク・セントリック・ヴォーフェアと呼ばれ、かってない超高速のテンポで精密攻撃を次々と繰り出し、イラク軍を圧倒した。正規軍におけるアメリカの絶対的優位を世界に示すものとなった。

 しかし今、変化が起きようとしている。新たな領域・クロスドメインとも呼ばれ、「宇宙・サイバー・電磁波」に代表されるこの戦闘空間は、前述のアメリカの圧倒的軍事力を支えるバックボーンだ。敵対する国家は、アメリカに軍事力全体では劣っていても、このバックボーンを破壊しさえすれば、アメリカ最先端の攻撃力は麻痺してしまうことに気付いた。

 それが、中国とロシアだ。

 両国は、そのための攻撃手段として、宇宙衛星への直接・間接の攻撃や、サイバー攻撃などの様々な攻撃手段をすでに手にしたか、手にしようとしている。アメリカを打ち負かすことができるかもしれない新領域の戦いで優劣を決定づける新たな技術こそがAIなのだ。

 アメリカも、AI技術が将来の軍事力の優劣を左右するとみて、一定の使用制限は設けながらも開発を進めている。新たな軍拡競争はすでに始まっている。

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