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2019年12月 3日 (火)

エピジェネティクス ―生命科学の新しい必修科目―(2) ③

続き:

 

■エピジェネティクスのキモ:ヒストンコードと DNA のメチル化

 

 DNAは、数珠あるいはネックレスのように、ヒストンというタンパク質に巻き付いている。昔は、ヒストンは、DNAが核の中でもつれないようにするため存在していると考えられていた。しかし 20c.の終わり頃、ヒストンの尻尾であるヒストンテールがアセチル化という化学装飾を受けると、そのあたりに巻き付いている DNA 上の遺伝子が発現しやすくなる、

 即ち、読みなさいという付箋が付けられた状態になることが分かった。他にも、ヒストンがメチル化修飾を受けると、遺伝子が発現しやすくなったり、しにくくなったりする。すなわち、読みなさいという付箋(=活性的メチル化)や、読んではいけませんという付箋(=抑制的メチル化)がついた状態になることなどが分かってきた。

 このように、ヒストンの化学修飾が遺伝情報の発現を制御するための「記号」として機能するので、ちょっとかっこよく「ヒストンコード」と呼ばれている。では、巻物の例であげた伏せ字もあるのかというと、これも実際に存在する。DNA の4つの文字である ACGT のうち、C だけがメチル化修飾を受ける。ごくおおざっぱにいうと、シトシンがメチル化を受けると、伏せ字にされて文章が読めなくなるかのごとく、その遺伝子が発現しなくなる。

 

 さて、エピジェネティクスの分子基盤の基礎の基礎、理解できたでしょうか。大事なところはいま、一度も二度も読み直して確認してください。

 次回はうんと具体的で、「エピジェネティクスはいったいどのような生命現象に関係しているか」の話題です。

 そういったトピックスを理解するために、「ヒストンがアセチル化されると遺伝子発現は促進される」ということと、「DNAがメチル化されると遺伝子発現は抑制される」ということだけはしっかりと頭に入れておいてください。

 

 

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