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2019年12月10日 (火)

A I 兵器―――異次元の危険領域 ①

津屋 尚(NHK国際部記者~解説委員)さんの長期の従軍取材からの小論を載せる コピーペー:「世界 10」から

 

◆ A I 殺人ロボット

 

 人の手のひらに載る数センチ程の超小型のドローン。一見おもちゃのような小さな物体には、AI・人工知能と爆薬が仕組まれている。スズメバチの羽音にも似た不気味な音を立てながらふわりと空中に舞い上がると、ドローンは自己制御して飛行。人の顔を識別するセンサーがターゲットに見立てた人形を発見すると、その頭部めがけて急降下して激突。拳銃でこめかみを撃ちぬくように頭蓋骨を砕いてしまった。

 これは、「LAWS=自律型致死兵器システム」の禁止を訴える国際NGOが作成した約7分40秒の動画のワンシーン。

 LAWSとは Lethal Autonomous Weapons Systems の略、人間を介さずAI自らの判断で人の命を奪う兵器を言う。「完全自律型のAI兵器」とも呼ばれる。米軍がアフガニスタンなどで実戦に多数投入している無人攻撃機は人間が遠隔操作をして攻撃の判断をしているので、LAWSはこれとは根本的に異なっている。

 では、LAWSとはどのような形をしたどんな武器なのか。研究開発途上にあるため「銃」や「ミサイル」のようにこれこそがLAWSだという完成形はまだない。しかし、急速な技術の進歩により、その出現が現実味を帯びてきている。NGO制作のPR動画は、実際に使用される可能性の1例を具体的に描いて見せ、LAWSの非人道性を伝えようとするものだ。

 動画の続きを見てみよう。次のシーンの現場は、アメリカの政治の中枢、ワシントンDC・キャピトルヒルにあるアメリカ議会。議員が殺人ドローンの襲撃を受け、多くの犠牲者が出る。この他にも、ホワイトハウスやニューヨークのウオール街、それに全米の大学なども襲撃を受ける。

 そのうちの一つが、郊外の小高い丘にある大学キャンパス。丘陵地をのぞむ田舎道に怪しげなワゴン車がとまっている。その後部ドアが開くと、超小型ドローンの群れが放たれる。ドローンは幾百もの群れとなって地面すれすれに飛行。大学まで飛行すると、頑丈な校舎の壁を打ち破って、授業中の教室の内部に侵入。学生たちは不気味な侵入者の群れに驚き、逃げまどう。机の下に隠れる者もいれば、外に逃げ出す者もいる。

 「殺人ドローン」が搭載するAIには、ターゲットとなる学生たちの識別情報がインプットされている。そのデータはインターネット上のSNS上にあふれる顔写真、それに宗教、思想などの個人情報から収集分析されたものだ。ドローンは学生の顔を瞬時にセンサーで識別。「殺すべき相手」を見つけると次々に突進し、「正確に」殺害していく……。

 この残虐な攻撃を仕掛けたのは誰なのかは明らかにされない。ドローン技術やネット上にあふれる個人情報はその気になれば誰でも入手可能だ。軍や治安当局だけでなく、テロリストや犯罪者の道具にもなりうるとの警告でもあるのだろう。

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