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2019年12月26日 (木)

Science 歯髄幹細胞が広げる細胞治療の今後の展望 ①

本田雅規(愛知学院大学歯学部口腔解剖学講座教授)さんの研究文を載せる。―コピーペー:

 

は じ め に

 

 いつものように、ヘンリー・ミラーの教え「今君は何か思っている。その思いついたところから書きだすと良い」に従い書き始める。令和元年の抱負は達成しましたか?筆者(本田)は、細胞治療の臨床応用は世界的に見ても、まだ、始まったばかりなので「これからやらねば」と思い「率先垂範」としたが、なかなか思うようには進まない。吉田松陰は弟子入りの希望者が来ると「私は教えることはできませんが、一緒に学ぶことはできます。ともに励みましょう」と答えた。

 細胞治療は、まさに、皆さんとこれから一緒に学ぶことが大切である。既にいろいろなところで細胞治療が紹介されている。細胞治療と言っても幅広いので、ここでは、歯科医師が身近とする歯髄の細胞を用いた細胞治療の現状と展望について私見を綴る。

 

1. これまでの再生医療とこれからの細胞治療の違いについて

 タイトルではあえて「再生医療」とせずに「細胞治療」とした。その理由から述べる。

 これまでの再生医療は、移植した細胞の組織系性能に期待した医療だ。骨を作りたい時には、骨を作る骨芽細胞や間葉系幹細胞を移植して骨の形成を期待する。間葉系幹細胞は、骨芽細胞に分化できるため移植に使う。20年ほど前になるが、ボストンのバカンティグループがネズミの背中にヒトの耳を作ったニュースを見た。その時の衝撃が本田(筆者)を再生医療の道に引き込んだ。耳の形をした担体(足場)に軟骨細胞を播種して、再生する軟骨で耳を作る古典的な再生医療だ。そして、本田は大学院の研究テーマを軟骨再生とした。

 しかしながら、いつからか、移植した細胞は、長期間移植部位に存在しないことが分かった。実際に軟骨細胞で背中に作った耳の軟骨組織はある時期をむかえると消失する。しかし、細胞を移植すると、移植しない時と比較して有意な差をもって組織形成される。その理由も徐々に分かってきた。間葉系幹細胞から分泌される種々の成長因子が、もともと生体にいる細胞を活性化して組織を再生するからだ。

 本田らもラットを使った歯周組織の再生実験を確認した。細胞を移植すると、移植した細胞はほとんど確認できなかったが、一部の細胞は再生した歯周組織内に存在した。つまり、移植した一部の細胞は組織を形成するが、ほとんどの細胞は生存していないようだ。

 今では、間葉系幹細胞から血管を誘導したり、炎症を抑制したり、免疫寛容に関与する因子が分泌されることが分かっている。疾患の多くは炎症なので、ほとんどの疾患に間葉系幹細胞から分泌される因子が有効になる。近い将来、薬のように間葉系幹細胞を用いる日がやってくる。これが細胞治療が期待される理由だ。

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