進化する A I 兵器 ③
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◆大学や民間技術の取り込み
最先端技術を活用する新たな戦争の形に備え、各国政府が近年注力するのが、軍民両にらみのデュアルユース技術の研究奨励と、優れた民間技術の軍事への取り組みだ。軍事技術開発はこれまで国家が主導してきたが、AIやロボティクスなどの先進技術分野ではIT企業や新興ベンチャー、大学などが高い開発力を持っている。そこに投資し、民生分野ではイノベーションによる経済成長につなげつつ、軍事力を高める狙いがある。
米国は新年度(2020会計年度)、過去70年間で最大となる国防研究開発予算案を計上し、AIや無人化などの軍事技術開発を加速させる姿勢を鮮明にした。これはオバマ前政権時代に始まった「サードオフセット(第三の相殺)戦略」を目指す国防イノベーション構想に沿っている。
東西冷戦期の1950年代に打ち出した核弾頭の小型化による大量報復(第一の相殺戦略)、1970年代以降の精密誘導兵器やステルス技術の導入(第二の相殺戦略)を一新し、従来技術で追いついてきたロシアや中国などに対する軍事的優位の再確立を目指している。
象徴的なのが、ハイテク産業が集まる西のシリコンバレー、東のボストン、南のオースティンに米国防省が2015年以降、相次いで開設した新拠点「国防イノベーション実験ユニット(DIUx)」だ。そこに▽新興の商業技術を見分けて戦場での利用可能性を調査▽軍事利用のために開発・適応が必要な技術を識別▽企業家らに安全保障上の問題や軍について紹介・勧誘――という三つのチームを用意し、状況を一変させる「ゲームチェンジャー」となる最新技術の獲得に本腰を入れている。トランプ政権の国防戦略は核戦力を再び重視しているが、先進技術を軍用化する意欲も衰えていない。
中国は2017年に習近平国家主席をトップとする「中央軍民融合発展委員会」を新設。軍事技術の民間活用と、民間技術の軍事転用を同時に進める方針を打ち出した。ハイテク産業育成10年計画「中国製造2025」や「次世代人工知能発展計画(AI2030)」も掲げて半導体分野やAI分野に重点投資し、先端技術を持つ海外企業のM&A(合併・買収)にも積極的だ。
EUは欧州防衛庁を中心にデュアルユース技術開発のファンディングを強化している。国連でのLAWS禁止に反対してきたイギリスやオーストラリアも、国防当局の科学技術研究所にAIラボを設け、国内大学との連携強化に力を注ぐ。
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