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2020年1月24日 (金)

軍事研究をアカデミズムは拒めるか ④

続き:

 

採択課題から見た軍事研究の動向

 これまでの採択課題も含めて、その特徴をまとめておく。

① 水中通信・水中電力輸送・無人水中探査機などで、今回S1件、A2件採択され、これまでの5年間の累計でS4件、A7件、C1件にもなる。MDA(海洋状況把握)が重要な開発目標であることがわかる。続くのは赤外線部材・赤外線レンズなど、人工衛星に搭載して微弱赤外線信号を捕捉する技術開発で、今回S1件、A1件採択され、累計でS2件、A3件になる。これはSSA(宇宙状況把握)技術の一端で、MDA、SSAともに日米の安全保障の要である。

② テロ対策のための毒ガスの探知・分解技術が今回はA1件、C1件(累計でS1件、A3件、C1件)、セラミックス材や高分子塗膜など新素材開発が今回S1件、A1件、C3件(累計S3件、A3件、C4件)も目立つ。

③ 興味深いのは、最初の2年間は「昆虫あるいは小鳥サイズの小型飛行体の実現」というテーマ名であったのを、2017年、2018年度には「生物を模擬した小型飛行体実現」と変えたが、いずれも応募がなかったのが、今年度に「生物模倣による効率的な移動体」に変更するやA1件、C1件が採択されたこと。「バイオミメティクス」と呼ぶ、生物が獲得している特異な能力を人間の手で実現し、技術開発に応用する工学分野がさまざまな領域で広がっており、アメリカ国防総省のDARPAも重要プロジェクトとして力を注いでいる。遅ればせながら、装備庁も「飛翔体」を「移動体」へと広げることで新規分野を開拓しようとしているのだろう。

④ さらに今回、「クラスターダイナミックス」と呼ぶ多数の小型ドローンの群行動制御という新たな技術開発が採用された。サウジアラビアの石油基地がドローンの一斉攻撃で破壊されたと伝えられるが、ドローンは今や「貧者のミサイル」になりつつあり、その制御は軍事開発の目玉になっていくのだろう。

⑤ 物質・材料研究機構(物材研)の研究者がA2件、C3件と突出して多く採択されている。これまでの採択が2016年A2件、17年S1件、18年A1件、C2件と、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と共に公的研究機関として従来から採択件数が多く、装備庁御用達の常連となっており、軍事研究に邁進する研究所へ堕ちていくおそれがある。

⑥ 昨年度まで富士通、三菱重工、IHI、パナソニック、三菱電機、日本電気、日立などの大企業がタイプS及びAに多く採択されていたのだが、今年度はタイプSの東レ以外大企業からの採択がなかった。大企業からの応募が減少し、採択できる提案もなかったのだろう。他方で、S2件、A3件、C1件と、ベンチャー企業・大企業の子会社・技術者協会が採択されており、昨年度(ベンチャーと技術組合でS1件、A2件、C1件)からこの傾向がくっきり出るようになった。投資資金を集めるには必死のベンチャーが、一点勝負のような形で特殊技術を売り物にしているのである。

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