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2020年1月25日 (土)

関西電力の企業ガバナンス ①

今沢 真(毎日新聞「経済プレミア」前編集長)さんは述べている。 「世界 1」よりコピーペー:

 驚きあきれるしかないスキャンダルが、関西産業界のトップ企業で明るみに出た。関西電力の社長や会長ら幹部20人が、原子力発電所のある福井県高浜町の森山栄治元助役(故人)から長年にわたり多額の金品を受け取っていたというのだ。2019年9月末、共同通信の報道で発覚した。

 20人が元助役から受け取っていたのは、現金、商品券、金貨、金杯、そして米ドル。小判や金の延べ棒、それに仕立券付きスーツもあった。12年間にわたって総額で約3憶2000万円相当になる。原子力部門を中心にばらまかれ、うち2人には1億円超が渡っていた。

 岩根茂樹関西電力社長が金品を受け取った場面を紹介する。2017年初め、商都・大阪にそびえ立つ関西電力本社の応接室で、岩根社長は元助役の訪問を受けた。社長は前年に就任したばかりで、元助役から「就任祝い」として紙袋を受け取った。

 紙袋がズシリと重たかったかどうかはわからない。元助役が帰った後、同席した原子力担当の副社長から「高額の金品が入っているかもしれません」と言われ、社長は秘書に渡して開封させた。菓子折りの下に金貨が10枚包まれていた。1枚15万円相当で、総額150万円の贈り物だった。お代官様と悪徳商人が登場する時代劇のシーンが現代によみがえったようだ。

 副社長に「返そうとしても簡単には返せない、私たちが機会を見て返しておきます」と言われた社長は、秘書に指示して金庫に保管させた。社長は社内のコンプライアンス委員会の委員長だ。法令遵守はもとより、後ろめたいことをしてはならないと社員に徹底させる立場だ。

 八木誠会長(2019年10月9日付で引責辞任)が元助役から受け取ったのは商品券30万円、金貨63枚、金杯7セット、仕立券付きスーツ2着だ。〆て859万円相当。スーツは1着50万円相当の高級品だ。会長はこれを仕立てて着用していた。記者会見で問われると「スーツの値段がよくわからず、儀礼の範囲内と思っていた」と言い訳した。

 スーツを受け取っていたのは会長ら11人。全部で75着、3750万円相当になる。原子力事業本部長だった副社長(2019年6月退任、その後非常勤嘱託)は、毎年のように数着の仕立券付きスーツを贈られ、全部で20着になった。

 岩根社長、八木会長は「原子力ムラ」の出身ではない。社長は原子力事業を担当したことがなく、元助役に個別に会ったのは社長就任後一度きりだ。会長は常務取締役になってから原子力事業本部の本部長代理、本部長となり、はじめて元助役と関わりをもった。

 社長、会長が金品を差し出されたときに、なぜ会社として毅然と対応する方向に舵を切ることができなかったか。会長はこの点について「なんとなく過去の慣例に従ってしまった。非常に甘かった」と反省の弁を述べた。

 いま、大企業で不正会計、不正検査といった不祥事が相次いでいる。企業が求められているのは、社内の不正を見つけ、正していく体制だ。社長、会長はその司令塔だ。トップが不正を見て見ぬふりをし、後で明るみに出たときに、会社は深い傷を負う。関西電力はその轍にはまってしまった。

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