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2020年1月 1日 (水)

Science 歯髄幹細胞が広げる細胞治療の今後の展望 ⑦

続き:

 

8. 末梢神経の再生も歯髄細胞で可能になる

 上顎埋伏智歯の抜去やインプラントの埋入などの手術後の合併症として、末梢神経の損傷による神経麻痺が起きる。損傷しやすい神経は下歯槽神経、舌神経および舌下神経であり、下顎第3大臼歯抜去後の神経損傷は0.4~8.4%の高頻度だ。末梢神経は再生能力を有するが、その再生能力は不十分であり機能が完全に回復されないこともあるので、末梢神経を再生させるための細胞療法の開発は必要である。

 末梢神経再生における移植細胞の第1候補は、シュワン細胞だ。シュワン細胞は、末梢神経においてミエリン(髄鞘)を形成するので、末梢神経の再生には必要不可欠だからだ。しかし、シュワン細胞の採取には、末梢神経を犠牲にする必要がある。そこで、本田らは歯髄細胞の効果を確認した。下歯槽神経に細胞を移植する良い動物実験モデルがなかったので、坐骨神経を用いた。

 ラットの坐骨神経を圧挫後に、挫滅させた神経線維の周囲に歯髄細胞を移植した。移植後14日、細胞移植群の左側後肢の屈曲はなく、その距離は右側後肢の健測と同程度だった。一方で、圧挫のみ(細胞移植なし)群の左側後肢は屈曲し、その距離は狭かった。坐骨神経が支配する前脛骨筋の筋湿重量を計測すると、細胞移植移植群の筋湿重量は、圧挫のみ群より有意に重かった。

 さらに、細胞移植群では髄鞘の形成量も多かった。この結果から、歯髄細胞は末梢神経の再生を促進することも分かった。―――課題は、下歯槽神経損傷時の歯髄細胞の投与方法を考えることだ。

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