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2020年1月18日 (土)

Clinical ~超高齢社会における歯科医療の役割~⑤

続き:

 

4. 口は栄養の入口

 

1) フレイル・サルコペニア・ポリファーマシー

 最近「オーラルフレイル」や「口腔機能低下症」といった言葉を聞く機会が増えたのではないだろうか。両者とも高齢者における口腔機能の低下を示す用語。口は栄養摂取の入口である。口腔機能が低下すると、栄養摂取も不十分となり、その結果、フレイルやサルコペニアのリスクが高まると考えられている。

 フレイルとは、日本老年医学会より、「加齢に伴って生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し、生活機能障害、要介護状態、死亡などの転帰に陥りやすい状態」と定義されている。つまり、栄養摂取不良、身体の衰え(身体的フレイル)だけでなく、認知機能の低下やうつ状態(精神的フレイル)、引きこもりなどの社会活動性の低下(社会的フレイル)などによる要介護に陥りやすい状態を指す。フレイルの特徴は、その状態が徐々に進行すること、可逆性を有することなどがあげられる。このフレイルの一要因が、口腔機能の低下と考えられている。

 一方、サルコペニアとは、身体のみに注目し、加齢に伴って筋肉が減少する状態と定義される。アジア人におけるサルコペニアの診断基準では、握力と歩行速度のいずれか、もしくは両方とも低下を示し、さらに筋肉量の減少が認められた場合にサルコペニアと診断される。全身の筋力低下によるサルコペニアは頭頸部にも影響を及ぼす。全身の筋力低下とともに、顎口腔領域の筋力低下が進行し、歯の喪失により、咬合力や咀嚼能力低下していく。咀嚼嚥下機能に直接影響を及ぼす基礎疾患がなくても、サルコペニアが原因となって嚥下障害が起こることがある。そこで、2019年にはサルコペニアによる摂食嚥下障害について、代表4学会による合同のポジションペーパーが発表されている。

 また、高齢者が内服する多くの薬剤は、唾液分泌抑制や嚥下機能低下等の副作用を有している。そのため高齢者では、代謝不全、脱水、または様々な基礎疾患や、それらに対する多剤服用(ポリファーマシー)から口腔乾燥を引き起こしやすい状態にある。

 以上のように高齢者では、様々な要因から口腔機能が低下しやすい状態にある。口腔機能の低下は、栄養摂取不良から栄養障害につながり、最終的にはフレイルリスクが高まる。そのため、これからの超高齢社会ではフレイル予防のための口腔機能低下へのアプローチが重要となる。

 

■ 口腔乾燥の原因

 

唾液腺の機能障害→シェーグレン症候群、頭頸部腫瘍への放射線治療

薬物の副作用→抗精神病薬、抗コリン薬、降圧剤など 口渇を副作用とする薬剤→重大な副作用:15件 副作用:624件

全身的要因→1.代謝性:脱水、糖尿病、腎不全、心不全、甲状腺機能亢進、下痢、尿崩症

     →2.蒸散性:開口、口呼吸、夜間口腔乾燥

 

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