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2020年1月17日 (金)

Clinical ~超高齢社会における歯科医療の役割~④

続き:

 

3) Oral Health Assessment Tool (OHAT) 日本語版

 アセスメントシートの要件は、煩雑でなく、歯科医療者でない看護、介護職の介助者が短時間で簡単に評価できる簡便性にある。また、簡便な口腔アセスメントシートを使用することで、他の職種との共通言語を持つことが可能となる。口腔ケアのアセスメントシートはいくつかあるが、ここでは Chalmers らによって施設入所の要介護高齢者の口腔アセスメント用に作成されたOral Health Assessment Tool (OHAT) 日本語版をご紹介する。 OHATは、自分で口腔内の問題を表出できないような要高齢者の口腔問題を見つけて対応するために開発され、多くの言語に翻訳され、妥当性と再現性が検証されている。

 介助者が OHAT を用いて口腔スクリーニングを行い、必要があれば歯科依頼を行うという連携ツールとして使用できる。日本語版は、著者らの許諾を得て筆者が作成し、折り返し翻訳 (back translation) による確認も済ませてある。当科の研究活動・プロジェクトのウェブページからダウンロードして使用できるので、興味のある方は一覧してください(http://dentistryfujita-hu.jp/index.html,)。

 OHATでは、口腔内の評価8項目(口唇、舌、歯肉・粘膜、唾液、残存歯、義歯、口腔清掃、歯痛)を、健全から病的まで3段階で評価する。

 OHATの特徴は、衛生状態の評価だけでなく、義歯の使用状況や破折の有無、う蝕の本数など咀嚼に関連する項目が含まれていることである。アセスメントは一見すると手間が増えると思われるが、評価時間は慣れれば1分もかからず、口腔アセスメントとともに口腔ケアプランを設定することで、病棟全体での手技の標準化を図ることができる。

 

4) 多職種による口腔機能管理の実際

 ここでは当院看護部でのOHATを用いた取り組みを紹介。まず、看護師の口腔アセスメントと口腔ケア手技の勉強会を実施。口腔ケアの主体となる病棟看護師の口腔内を観察する目を鍛えて、口腔ケアの手技を向上させることは重要である。また勉強会の開催は、歯科口腔衛生士が看護師と顔見知りの関係になり、日常臨床でのコミュニケーションの向上にも役立つ。

 まず、対象患者の担当看護士が、入院時の全身フィジカルアセスメントとともにOHATを用いて口腔アセスメントを実施した。口腔ケアの回数は、経口挿管の有無、経口摂取の有無、セルフケアのレベルによって決定される。また、OHAT評価によって、粘膜ケアの回数を決定する。OHATスコアに準じた口腔ケアプランを、ベッドサイドに貼付し、患者ごとにケアが実施される。また、スコアに準じて歯科受診が必要と判断した場合には、歯科への依頼が検討される。

 急性期病院である当院では、1週間ごとにOHATの再評価が行われ、点数の変化によりプロトコルを変更していく。結果として、OHATスコアは、2週間後の再評価時には初回と比べて、全体の項目が低下傾向を示し、特に、粘膜の指標である口唇や舌、乾燥状態を示す唾液や歯面を中心とした清掃状態の項目で有意な改善を認めていた。

 歯科への依頼は、対象患者35名中12名(34%)であり、義歯の修理、調整なども適宜行われた。

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