関西電力の起業ガバナンス ③
続き:
■ 会見の後で明らかになった事実
金品授受が発覚した後、関西電力は9月末から10月のはじめにかけて3度にわたり記者会見を行なった。世間から厳しく批判された関西電力は「可能な限り詳細に説明する」との姿勢で臨んだが、説明の矛盾や隠蔽体質が、そこでも浮き彫りになった。
このうち、10月2日に行われた2度目の記者会見で、記者の質問に初めて明かされた事実を紹介する。関西電力はこの日、報道陣との質疑を途中で打ち切ることはせず、すべての質問に答える態勢をとった。記者会見は pm 2:00 から始まり、延々と6時間余り続いた。
最初に岩根社長と八木会長が登壇し、初めて公表した社内調査報告書について、説明と質疑を行なった。続いて社内調査委員会の委員長を務めた小林敬・弁護士(元大阪地検検事正)が登壇した。最後に岡田達志・常務執行役員ら調査委員会事務局が質疑に応じた。
関西電力の説明の矛盾を突く質問が出たのは、事務局が記者からの質問に答えていた時だった。読売新聞の記者が、調査報告書に「(関電幹部の)20人が、森山氏から、現金、商品券、米ドル、金貨等の金品を渡されていた」と書かれた部分を示し、「森山氏等」の「等」はだれを指しているのかと質問した。
事務局は「『森山氏との会食に同席していた工事業者から金品を渡された』と供述したものがいた」と答えた。回答を受けてこの記者は「(関電幹部は)森山元助役から金品をもらったと認識していたが、正確には『森山氏と業者からもらった』ということか」と質問し、事務局は「そう供述した者がいた」と回答した。
この質問からさらに30分後、朝日新聞の記者が、「森山氏等の『等』は、(元助役とのつながりの深い建設業者の)吉田開発の社長か」と尋ねた。これに対し事務局は「『等』が何を意味するかは100%の確証がなく、大事なところなのでしっかり調べて回答する」と述べ、その回答を留保した。
会見が終わり、夜11時過ぎになって、関西電力は報道各社にメールで回答した。それによると、元助役以外に、吉田開発と別の工事業者1社の計2社が金品を渡していた。受け取っていたのは関西電力の役員3人。1人は吉田開発から現金100万円と商品券40万円、1人は別の業者からスーツ4着、残る1人も別の業者からスーツ1着を受け取っていた。
関西電力はそれまで、元助役から金品を渡され、返そうとすると激高され返せなかったと説明してきた。ところが元助役だけでなく、原発がらみの工事を請け負う建設業者からも直接、金品を渡されていたというのだ。金の流れは「電気料金→関西電力→原発工事業者→関西電力幹部」となり、「原発マネーの還流」の構図はより直接的になる。
「等」の1字に事実が隠されていた。あの記者の質問がなければ、この事実は今も伏せられた可能性がある。
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