« Report 2019 新型インフルエンザ ③ | トップページ | Clinical ~超高齢社会における歯科医療の役割~② »

2020年1月14日 (火)

Clinical ~超高齢社会における歯科医療の役割~①

松尾浩一郎(藤田医科大学医学部歯科・口腔外科学講座主任教授)さんの研究論文を載せる :コピーペー:

 

1. 歯科を取り巻く環境の変化

 

 超高齢社会の到来により、近年の社会構造が変化している。それに伴い、この10年間で歯科を取り巻く環境は急速に変化してきた。歯科保健活動の普及により、若年者のう蝕罹患率は減少し、治療から予防へと外来歯科診療体系がシフトしていく。一方、平均余命の延長に伴い、多障害、多疾患を有する高齢者が増加することで、必然的に外来で対応する患者の基礎疾患に注意しなければならなくなり、障害や後遺症への対応も必要になる。クリニックに来られなくなってしまった患者に対して、訪問歯科診療での対応も必要になってきている。

 今後超高齢社会に対して、われわれ歯科医師はどのような準備をして、対応していかなければならないのか。医療・介護現場から切り離されて考えられてきた「歯科医療」は今何を求められるようになってきているのだろうか。超高齢社会で実際に歯科はどのような役割を期待されているのか。本稿では、超高齢社会の医療、介護福祉の現場で期待を寄せられる歯科医療のあり方について概説する。

 

2. 歯科への期待~う蝕・歯周病予防からフレイル・肺炎予防へ~

 

1) アウトカムの変化

 超高齢社会では、高齢者人口が相対的に増加するために、歯科医師が診察する高齢者の割合は必然的に増加。さらに、外来に来られない患者の割合も増加するであろう。

 われわれ歯科医師が超高齢社会へ対応するには、従来のう蝕、歯周病への保存治療や欠損補綴のような形態学的回復を目的とした診療だけでなく、(保存治療も欠損補綴も高齢者への対応方法は変化してきていると思うが)、高齢者の口腔機能へのアプローチも必要になってくる。他職種と協働するとき、われわれは「歯」の専門家ではなく、「口」・「食べること」の専門家としての意見を聞かれる。従来の歯科としての役割+αのニーズに応えられるだけの対応力が必要になる。

 口は、栄養摂取の入口であるとともに、全身の感染症の入り口にもなり得る。しかし、健常者では、普通に食事がとれ、通常の免疫能力を有するために、歯科治療を行うときに、口腔が原因となる栄養障害や感染症などを考えることはない。咬合の回復や良好な歯周環境の維持が歯科治療の目的でありアウトカムとなる。

 一方、高齢者になると、加齢、疾患、障害等により、口腔機能が低下し、口腔衛生環境が悪化し、それらが栄養摂取不良、感染という経路を経て全身へと影響を及ぼす。

 従来、歯科治療は健常者を主な対象としていたが、超高齢社会では必然的に多疾患、多障害を有する高齢者の割合が増加。それに伴い、歯科治療のアウトカムが口から体へシフトする。口腔衛生環境を良好に保つことで、肺炎などの感染症の予防となる。高齢になっても健康な口腔機能を保つことは、おいしく口から食べることができ、メタボリックシンドロームやフレイルの予防に繋がる。

 つまり、易感染、低栄養となり得る高齢者への歯科的対応とは、全身または局所の感染症予防を目的とした口腔衛生管理、歯周治療、外科処置であり、栄養改善を目的とした補綴治療や摂食嚥下リハビリテーションとなる。

 う蝕や歯周病の予防や対応が中心であった歯科医療は、超高齢社会とともに、肺炎やフレイルの予防までを視点に入れた考えが必要になってきている。     次回   2) 感染と栄養   から始める。

« Report 2019 新型インフルエンザ ③ | トップページ | Clinical ~超高齢社会における歯科医療の役割~② »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事