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2020年1月 8日 (水)

「殺人の自動化というテクノロジー」―⑤

続き:

 

<5> おわりに

 ここで私たちは、自律型兵器が戦争に対するハードルを下げ、結果、戦争を増加させることになるという論点を取り上げ、それが現実的な懸念であることを見た。それだけではなく、おそらく自律型兵器は望ましくない仕方で戦争の戦われ方を変容させるだろうということを論じた。これに対しては、たまたまアメリカ軍がドローンをそのような仕方で使っているからと言って、それを一般化してさらに自律型兵器に類推を広げる論証は説得力がない、という反論があり得るだろう。確かにそうかもしれない。

 ただし久木田(筆者)は道具というのはすべて使い方次第、使う人次第であるとは考えていない、多くの道具は人間の心理や生理の脆弱性と相まって、人間の思考や行動を一定の方向へと誘導する固有のバイアスを持っていると考えている。特にドローンや自律型兵器という道具は、相手を殺すことへの心理的抵抗を下げ、常時監視や暗殺を動議づけ、付随的損害を増加させるバイアスを持っているかもしれない。

 そして、テロリズムや中東問題のスペシャリストであるジェニファー・ウィリアムズが述べるように、真の問題は「誰も本当のところは気にかけていない」ということだ。アメリカ軍がイラクのアブグレイブ刑務所で捕虜を虐待していたことが判明したとき、とりわけ虐待の証拠となる衝撃的な写真が公開されたとき、世論は政権を激しく批判した。しかしドローンの問題に関して、アメリカの社会は驚くほど無関心だ。これもドローンという兵器が人間心理に与える影響なのかもしれない。テクノロジーについて考える時は、個々の道具の持つ方質的な特徴について考え、それが人間をどのような志向や行動に駆り立てるかを考えることが重要である。

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