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2020年2月 4日 (火)

個人データ保護とは何? ⑦

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事態の打開に向けて

 ちょうど今、個情委は、次の個人情報保護法に向けた3年ごとの見直しの検討の最中である。2020年の通常国会に改正法案が提出されると言われている。リクナビ事案がこれだけ世間の強い関心を集めたのであるから、何らかの対応が求められることとなるであろう、

 EUのGDPRに倣って、プロファイリングに係る規定を新設してはどうかといった意見も耳にするが、その前になすべきは、この法の目的を明確化することである。リクナビ事案のような事態を防ぐことが法目的の一つとして理解されなければ、個情委でさえ個人情報該当性の解釈もままならないわけである。

 そして、個人情報定義の「容易に照合することができ」の文言への誤解が後を絶たず、個情委でさえその有権解釈を決めかねているのなら、内閣法制局を巻き込んで、昭和63年法の立案過程に遡って本来の趣旨を確認し、誤解のないよう定義を明確化する改正(「容易に」という曖昧な語を改め、具体的にその意義を明文化する)を行なうことが現実的かつ効果的ではないか。

 こうした法目的の明確化は、逆に、個人データの正当な利活用を後押しすることにもなる。あまり知られていないことだが、多数の人の個人データを統計量に集計して用いることは、個人データの利用に当たらないとする解釈が、個情委のガイドラインQ&Aにひっそりと示されている。これは、データによる人の選別を伴わない点でリクナビ事案とは対極にある、正当な利活用の方法だ。就活関係で言えば、求人企業ごとに、何割の応募者が内定を辞退しそうかという歩留まりを予測して販売することは正当な事業であり、データ保護的に問題がない例と言えよう。

 ここの区別がないままでは、人々は疑心暗鬼となって、いかなる個人データも一切取得を許さないとする姿勢になってしまいかねない。

 内閣IT総合戦本部の「官民データ活用推進基本計画実行委員会データ流通・活用ワーキンググループ」が2019年2月に公表した「我が国におけるデータ活用に関する意識調査」では、一般消費者を対象としたアンケート調査として「企業に提供できる情報の種類」と「提供条件」を質問している。その「提供条件」の選択肢として「プライバシーが保護されること」「流出の心配がないこと」「悪用の心配がないこと」「誰に提供されるか明確であること」「管理体制がわかりやすいこと」などを用意していたようだが、このアンケートは肝心のことを質問していない。

 まず聞くべきは、提供した個人データが統計量へ集計して用いられるだけなのか、それとも自身への何らかの評価・選別に使われるのかの区別であろう。そこの受容性の違いを問わずして、「一定の金銭やポイント付与されれば提供できる」だの「特別なサービス(特典)が付与されれば」だのと、対価で受容性を買うような話や、「社会貢献に繋がるのであれば」だのと、ピント外れな調査結果ばかりが羅列されている。こんな認識で進めていたのでは、いくら対価で釣っても個人データの利活用は進まないだろう。

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