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2020年2月23日 (日)

Clinical 新しい歯周病の分類 ⑥

続き:

 

4. その他の歯周疾患

 

 ワークショップ③ではその他の歯周組織に影響を及ぼす疾患について議論された。こちらでもいくつかの新しい分類や用語の変更がなされたため、いくつか紹介したい。

 歯肉退縮の分類がCairoの分類とPini Pratoの分類に基づき整理された。生物学的幅径"biologic width"については、より具体的な組織を反映する"supracrestal tissue attachment"と言い方を変え、可変的なものであることが確認され、組織学的には接合上皮と骨縁上結合組織部分であると説明された。その他、歯周―歯内病変や歯周膿瘍についても知識の整理が行われた。

 

5. インプラント歯周炎

 

 ワークショップ④では、1999年の分類にはなかったインプラント周囲組織の状態および疾患に関する分類が新たに加えられた。インプラント周囲組織は健康、インプラント周囲粘膜炎、インプラント周囲炎という3つに分類され、BOPと歯槽骨吸収の有無がその鑑別に用いられている。また、インプラント周囲炎の進行は歯周炎よりも急速で、その進行は一定ではなく、加速的であることが確認。

 

まとめ

 

 以上の新しい分類及び概念は当日の議論だけで決定されたものではなく、本ワークショップに先立って最新のエビデンスをまとめた総説論文が作成され、通常通りのピアレビューを受け、受領されたものを資料として、必要な定義や分類が作成・改訂された。筆者(村上)も1999年のワークショップに引き続き、今回はワークショップ②に参加し、3日間に及ぶ真摯な議論に参加した。

 歯周炎の新分類については、少なくとも現時点においては、様々な観点において賛否両論があるものと推察する。フレームワークの導入により個々の患者の状態をより細かく表すことができ、中でもグレード分類により病気の進行度の概念に対応するなど改善が認められる。しかしながら、旧分類が適切だというエビデンスがないから変えてしまおうという裏返しに、新分類が適切だというエビデンスがあると言えるわけではない。特に、侵襲性歯周炎と慢性歯周炎の区別をなくすことは、これまでの臨床上・研究上の経緯を無視することになる。例えば、細菌学的な観点からの論評や、かって重要視された家族内集積(遺伝的因子)の意義は、ステージ・グレードの評価において全く無視されている。

 このように歯周病菌、宿主の疾患感受性決定因子といった記述が一切なくなったことは、近年の歯周病学の知見に十分に合致しているとは言いがたい。加えて、CALを主な基準として用いる場合、診断にアタッチメントレベルの測定が必要となるため、日常臨床における歯周組織検査としては労力が多くなる。なお、本稿で用いた用語は、日本歯周病学会による歯周病学用語集に則って使用したが、同用語集でアタッチメントレベルの略語のままCALについては、新分類に用いられた略語のままアタッチメントロスの略語として用いていることに留意願いたい。

 ステージとグレードにおける各要因の重み付け(優先度)は明確には定義されておらす、新分類発表後、前述のフローチャートを発表した以外にも、AAPおよびEFPの公式ホームページでのガイダンスやFAQなど補助資料を出版し、若干の修正を加えながら、新分類についての理解が得られるよう努力している。糖尿病と喫煙以外のリスクファクターの取り扱いについても今後の課題であろう。事実、この分類は定期的な改訂を前提としていることが明記されており、今後、様々なフィードバックを受けることで、臨床家、研究者、そして歯周病患者に益する新分類になることを願っている。

 また、今後、侵襲性歯周炎患者を対象とする、転写産物・タンパク質・代謝産物などの生体分子を網羅的に解析するオミクス研究等により、同疾患の病態や病因理解が進んだ場合には、この分類も再考されることになるだろう。新分類論文のAppendixにおいては、「歯周炎の疫学調査や研究においては、日常臨床で用いる新分類より、精密かつ詳細な症例定義の必要がある」と述べられていることを最後に付記しておきたい。

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