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2020年2月20日 (木)

Clinical 新しい歯周病の分類 ③

続き:

 

2. 歯周炎の新分類

 

 1999年の分類は、大別して2つであったが、新分類では1つの歯周炎としてまとめられた上、腫瘍や線維症といった慢性疾患でしばしば用いられる、ステージとグレードの評価に基づく診断のフレームワークが導入された。具体的には、歯周病の重症度と管理の複雑性によって4つのステージ(ステージIが最軽症、ステージⅣが最重症)に分けられ、歯周炎の進行リスクは3つのグレード(グレードAが最も低いリスク、グレードCが最も高いリスク)に分けられ、グレードの評価の際には喫煙や糖尿病といったリスクファクターを勘案することとなった。すなわち、ステージは現時点での病気の進行程度を表し、グレードは病気の進行速度(悪化していくリスク)を表している。

 1999年の分類では、歯周炎の病態や臨床所見に着目し、急速なアタッチメントロスと骨破壊、家族内集積といった特徴をもって、侵襲性歯周炎が慢性歯周炎と異なる病気であると分類された。しかしながら、今回のワークショップにおいては、両者はオーバーラップしており、病理学的な違いも明らかにないため、これらが異なる病気だとする明確なエビデンスが十分に得られていないとの考えから、歯周炎として1つにまとめられた。

 一方で、個々の患者においては他因子が相互に作用することで病気の表現型が決定されているとのエビデンスがあること、人口単位でみると歯周炎の進行速度は一定であるのに対して、その中に明らかに急速に進行する歯周炎患者の亜集団が存在することから、重症度、複雑性、リスクファクターといった個々の患者重要な側面を勘案した分類が必要であると結論付けられ、ステージとグレードの導入に至った。

 まず、ステージの分類のための主な基準(key criteria)は、臨床的アタッチメントロス(CAL)であり、次に歯間部のX線画像上での歯槽骨吸収(RBL)である。ここで歯周炎の定義として、「隣接しない2本以上の歯において、2mm以上の隣接面のCALが存在」もしくは「2本以上の歯において、頬舌側に3mmより大きいPDかつ3mm以上のCALが存在」し、以下の状態ではない場合と定義された。

 ●外傷要因による歯肉退縮

 ●縁下カリエス

 ●下顎第二大臼歯遠心面で、智歯の位置異常によるものやその抜歯後

 ●歯周―歯内病変のうち歯内由来であるもの

 ●歯の垂直破折

 また、歯周炎によって1本以上の歯の喪失の既往がある場合には、key criteriaによらずステージⅢ以上となる。さらに、症例の複雑度(PD、骨内欠損、根分岐部病変、歯の動揺、咀嚼機能不全)によって、ステージが変動。例えば、ルートトランクが短く、CALは少ないが、2度の根分岐病変(LindheとNymanの根分岐病変分類)がある場合、key criteriaによらずステージⅢもしくはⅣとなる。また、ステージⅢとⅣはkey criteriaに違いはなく、症例の複雑度によって決定される。そして、範囲(全歯数に対する罹患歯数の割合が30%を境に限局型もしくは広汎型)を付記すると述べられている。

 グレードは病気の進行速度(悪化のリスク)の指標である。グレードはBを標準として、AもしくはCとなる証拠を検討する。グレードの分類のkey criteriaは進行の直線的・間接的な証拠であり、CALやRBLの増加の証拠(=直接的な証拠)が得られるなら、これが優先される。

 得られない場合には、間接的な証拠として、RBLを年齢で割った数字(例えば60歳で最も大きなRBLが30%の場合、30/60=0.5)や、症状の表現型を用いる。このようにして決まったグレードは糖尿病および喫煙という2つのリスクファクターの有無によって変動する。

 これらの診断は初診時に決定し、もし症例の複雑度が改善したとしてもステージが下がることはないが、グレードは治療への応答、コンプライアンス、リスクファクターの変化などによって改変し得る。

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