« Science 歯周病原細菌による血栓モデルからみた閉塞性動脈疾患ならびに静脈血栓の病態 ⑥ | トップページ | グローバル・トレンドを読む ① »

2020年3月20日 (金)

Science 歯周病原細菌による血栓モデルからみた閉塞性動脈疾患ならびに静脈血栓の病態 ⑦

続き:

 

10. 粥状硬化性疾患と歯周病菌による血栓との相関

 バージャー病患者の50歳以上で老化に伴う動脈変化を見ると、ほとんどが粥状硬化。血行再建となった症例では、検鏡下ではっきりと証明されている。また、血管撮影などでも診断がつく。紡錘形の動脈瘤ができた例も粥状硬化と考えてもよい。前の8.での診断基準から一つでも外れた患者はどうなるのか、取り扱い基準がない。バージャー病類似疾患となり、これもやはり粥状硬化症の一亜系型となる。現代の基準では、40代でも純粋の粥状硬化を見ることもあるので診断基準の年齢を引き下げる必要があると思われる。35歳とすれば純粋なバージャー病が捉えれられるかもしれない。そうなると新しい診断基準は、「35歳以下発症、ヘビースモーカー、下肢動脈閉塞、上肢動脈閉塞または遊走性静脈炎の存在」となる。

 粥状硬化促進因子のない健康なラットに歯周病菌血症を作り、その血栓がバージャー病病理に類似していればまさに実験が的中したことになる。結果は先に示した通りであった。バージャー病は、若年性粥状硬化症と呼ばれる時代があったことを考え合わせると、この病気は粥状硬化症と一線上にあってつながっていると考えられる。

 1957年に「ハーバードの告発」と言われた事件は、バージャー病は中枢にできていた粥状硬化によって引き起こされた末梢血管の2次性変化ではないのかという疑問が引き金となっている。さらにバージャー病患者が心筋梗塞や心不全で死亡する例から、バージャー病の独立性を怪しんだものであった。そして、1960年 Wessler は「バージャー病そのものを放棄すべし」と宣言することになった。しかし、その後に禁煙を守ったら完全に治ったというバージャー病罹患医師の証言などがあり、若者の病気として確立していった。このことは、バージャー病と粥状硬化症は極めてつながっているということに他ならない。その裏には、詳しい実験モデルから知り得た多くの炎症細胞や炎症物質の放出は、歯周病菌血症がそのまま進んで粥状硬化に引き継がれていくと考えることが妥当と結論できそうになってきた。1963年神谷、塩野谷は202例から得た52の検体から病理学的検討を加えて、血栓血管炎(バージャー病)と粥状硬化との混在は自然な結果であると述べた。

 

11. 歯周病治療とその効果

 我々はバージャー病患者全員に歯周病治療をすすめているが、多くは診断がついて禁煙していたり、歯喪失していたりで治療効果の分析は不十分。しかしながら、我々の患者(50名程度)では禁煙と歯の治療で病気の進行したものはいない。喫煙を隠した例が重症化した51歳男性例を経験した。この例は脳梗塞も発症し、同様症例の脳梗塞1例とともに2例の推移を見守っている。脳血管障害(アルツハイマー病を含めて)もバージャー病の一部と考えられている。

 

おわりに

 細かいことを言えばきりがないが、大まかなところで歯周病菌血症と、バージャー病との位置付け、病気全体の理解をしていただいたと確信している。そして一応の結論めいたことが言えたと思われる。これからは、バージャー病撲滅に向けて、医科と歯科の更なる連携が望まれる。なお一層の視点を変えた研究が進むことを願っている。

« Science 歯周病原細菌による血栓モデルからみた閉塞性動脈疾患ならびに静脈血栓の病態 ⑥ | トップページ | グローバル・トレンドを読む ① »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事