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2020年3月 1日 (日)

再びアフガニスタンを忘れないために ②

続き:

現状とターリバーンの台頭

 現在まで続く戦闘は、2001/09/11、に発生したアメリカ同時多発テロ事件に端を発している。アメリカによって事件の首謀者と特定されたサウジアラビア出身のオサーマ・ビン・ラーディンを匿っているとの理由で、当時彼が身を寄せていた「ターリバーン政権」に対しアメリカを中心とする国際部隊が攻撃を行った。当時のターリバーンは国内の9割以上を実効支配していたが、この攻撃により「政権」は崩壊した。

 その後、アメリカを中心とした国際社会の支援の下、新国家建設事業が進められ、併せて長年の戦乱で荒廃した国土を再建するための復興支援活動が実施された。当初は、国際社会からの支援に基づいて新しい政治体制を構築すると同時に、戦争に長年従事してきた人々の社会復帰を促進することで、平和な「新生アフガニスタン」建設が実現可能であるという希望的観測が広がっていた。

 しかし、多額の支援と、日本を含めた各国やNGO等の懸命な活動にもかかわらず、政治・社会・経済あらゆる側面において安定し自立したアフガニスタンは五里霧中の現状にある。

 治安も悪化の一途を辿り、近年ではシリアやイラクで一時的に拡大したいわゆる「イスラーム国(IS)」の影響を受けた「ISホラーサン州(ISKH)」が活動を活発化させ、各地で武力攻撃やテロ事件を多数実行している。ISKHは政府軍やアメリカなどによる激しい空爆により主要幹部が次々と殺害されるとともに、ターリバーンとの争いも重なりその勢力は急速に弱体化している。その一方で、首都カーブルをはじめ各地で大規模なテロ事件をたびたび実行しており、その影響力は無視できない。

 しかし、政府にとって最も大きな脅威は、ターリバーンの勢力拡大だ。ターリバーンは新国家建設時に政権構想から除外され、反政府闘争を継続した。現在はもともとの地盤であるパシュトゥン多住地域の南部や東部に加え、北部や西部など全土に影響力を拡大している。勿論、その内部は様々な派閥に分岐していると考えられ、完全に一枚岩の組織とは言えない。ただ、その武力に加え、アメリカをはじめとする国際社会側の厭戦気分と援助疲れの影響も相俟って、国際的にも大きな存在感を示しつつある。

 アフガニスタンの治安維持を担っていた国際治安支援部隊(ISAF)はすでに2014年末に撤退し、それ以降の外人部隊はアフガニスタン軍に対する訓練・助言を任務の柱とする「確固たる支援任務(Resolute Support Mission)」という形で大幅な兵力削減をし駐留を継続している。

 アフガニスタン軍がISAFに代わって治安維持を担うことになって以降も、全土でターリバーンとの激しい戦闘が繰り返され、アフガニスタン側の死傷者数は増加の一途を辿った。このため、2018年2月に開催されたカーブル・プロセス会合において、ガニー大統領はターリバーンとの和平交渉実施を強く望む意思を明確にした。

 2017年1月に成立したアメリカ・トランプ政権もまた、アフガニスタンからの米軍早期撤退を強く望み、そのための手段としてターリバーンとの和平交渉に対して積極的な姿勢を見せた。実際に、2018年7月には米国務省の担当者がターリバーン側と接触を開始し、9月4日には元駐アフガニスタン・アメリカ大使であったハリルザードをアフガニスタン和平担当特使に任命している。以降現在に至るまで、カタルの首都ドーハに設置されているターリバーン政治事務所のメンバーとの間で、複数回にわたって直接交渉を行った。2019年9月のテロ攻撃によるアメリカ兵死亡事案を受けてアメリカ側が交渉を一時中断したものの、年末の12月には再開されている。

 中東・南アジアにおいて影響力を拡大しつつあるロシアや、サウジアラビア、さらにはターリバーンに直接的影響力を有するとされているパキスタンなどの周辺各国も、ターリバーンが参画する形での和平実現に向けた積極的姿勢を見せている。そのため、2019年を通じて紆余曲折がありつつも、ターリバーンとの和平交渉を進めるという点はもはや既定路線となった。

 そして、2020/01/17、には、カタル政治事務所のシャピーン報道官がアメリカとの間での和平協定調印に合意した旨を発表した。今後も両者間での和平交渉は基本的に進展すると予測されるが、当事者であるはずのアフガニスタン政府は蚊帳の外に置かれた状態であり、ターリバーンとの間でどのような関係が構築されていくのか注視しなければならない。

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