エピジェネティクス―生命科学の新しい必修科目―(5) ②
続き:
■ エピゲノムとは
作用機序がいまひとつわからないとはいえ、アザシチジンという大きな成功例があるために、エピジェネティクスを探る薬剤の開発は大きな期待がもたれており、「エピゲノム創薬」と呼ばれている。まず、その説明の前にエピゲノムとは何かについて紹介します。
「オーム : -ome」というのは、ギリシャ語の「すべて、完全」などを意味する接尾語である。例えば genome(ゲノム、ただし、英語での発音はジィノム)といえば gene=遺伝子の -ome 総体で、全遺伝子情報である。また、最近話題になっている腸内や口腔内のフローラ(細菌叢)は、マイクロバイオーム (microbiome)、すなわち微生物 (micorbe) の総体という用語が学術的にはよく使われる。
だから、エピゲノムはエピジェネティクス状態の総体を指す。エピジェネティクスの分子基盤といえば、DNAメチル化状態とヒストン修飾なので、エピゲノムといえば、全DNAメチル化状態と全ヒストン修飾状態の総和ということになる。
現時点ではまず、正常な細胞でのエピゲノム状態の解析が行われている段階。こういったデータが蓄積され、いずれ様々な疾患のエピゲノム状態が明らかになれば、新しい診断法や治療法の解析につながると期待されている。
ただし、それにはかなりの年月と費用が必要である。それ以前に、何らかの画期的な技術開発がなければ十分な解析は難しいかもしれません。
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