エピジェネティクス―生命科学の新しい必修科目―(6) ③
続き:
■歯周病における上皮細胞のエピジェネティクス制御
歯周病の発症や進行においては、発症性細胞のみでなく、歯肉の上皮細胞も関与していると考えられる。その観点から、上皮細胞の接着斑形成に関与する分子である Plakophilin2 (PKP 2) と、細胞間接着分子である E-cadherin との解析が行われた。
ヒト歯肉上皮細胞の培養にP.gingivalis あるいはF.nucleatumを感染させ、それぞれの遺伝子の DNA メチル化と発現が調べられた。
P.gingivalis により PKP2遺伝子の DNA メチル化は著しく上昇して、おそらくはそのために遺伝子発現が有意に低下していた。また、上皮細胞同士の接着の低下も認められたことから、DNA メチル化が P.gingivalis 感染による歯周病発症に何らかの関わりを持つと結論づけられている。
歯周病菌の感染がどのようなメカニズムで DNA メチル化に影響を及ぼすかなど、不明な点は数多く残されているが、その研究は病因解明の一助になっていくだろう。また、口腔がんの発症には、歯周病や喫煙によるエピジェネティクスの変化が関与しているとされている。発がんは基本的には遺伝子変異によるものであるが、エピジェネティクスが関与していることも間違いないので、口腔がんでもその可能性は十分に考えられる。これも将来が楽しみな研究分野である。
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