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2020年4月28日 (火)

原子力ムラの癒着と不正その責任を問う ⑤

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事件の構図からは収賄の授受が十分認定できる

 収賄罪が成立するためには「不正の請託」を受ける必要がある。請託とは、その職務に関して将来一定の行為を行うことまたは行わないことを依頼することをいうとされる(最判 s.27/07/22 刑集6巻7号927p)。明示的である必要は無く、黙示的に依頼の趣旨を表示するすることも含まれる(東京高判 s.37/01/23 高判集15巻2号100p)。

 「不正」とは違法を意味し、請託を「受け」るとは依頼を受けてこれを承諾することである。被告発人らは、いずれも関電と原発事業のトップの地位にあり、原発業務に関して職務権限があり、関電の管理運営する高浜原発3、4号機の「誘致やとりまとめ等に深い関わりをもった」(内部報告2p)という森山氏から金品を受け取り、関電はその見返りとして森山氏に対して原発関連工事の情報を提供し、吉田開発に多額の原発関連工事を発注し、便宜を図ってきたと考えられる。

 朝日新聞の取材によって、内部報告に記載された30名の他に、関電歴代の15人の幹部も森山氏から金品を受領していたと話しており、その中の最も古い時期の金品の受領は森山氏が助役を退いた直後の1987年ごろである。関電の複数の元役員・幹部が森山氏の関連会社への発注増を求められたと話しており、関電の元副社長内藤千百里氏も、生前、朝日新聞の取材に受領を認める証言をしていたこと、結果的に、森山氏の関連会社の受注は増加し、森山氏が相談役を務めた柳田産業は1987年からの10年間で売り上げを約5倍の90億円超に伸ばしていたことが判明した(2019/12/12、朝日新聞)。柳田産業関連のことは、内部報告では巧妙に隠されているが、柳田産業は、2013年度から2018年度、関電側から約149億4000万円もの工事を受注していた(2019/10/09、NHK)。

 毎日新聞の記事でも森山氏から関電幹部へ金品が渡され、工事発注の依頼がなされていたことが報じられている(2019/10/08、毎日新聞)。さらに東京新聞の記事によると、福井県敦賀市の建設会社「塩浜工業」は、約20年前、森山氏が関電の工事発注に影響力を持っているとの情報をつかみ、同社の幹部が森山氏に同社の顧問就任を要請したところ森山氏が快諾し、森山氏の働きかけで原発関連工事を受注した場合には毎月50万円の報酬とは別に、受注額の数%も支払っていたいたという(2019/12/04、中日新聞)。まさに、森山氏は関電の原発工事の仕切り役であり、森山氏を通じれば原発の仕事にありつけるという情報が原子力業界の常識となっていたことがわかる。

 森山氏が億単位の多額の金品を、何らの見返りを要求することもなく渡すとは考えられない。森山氏が関電役員らに金品を渡す理由は、工事発注とそれに関連する情報提供を依頼する趣旨であることは明らかだ。関連は内部報告で、森山氏に対して吉田開発への発注工事の工事概算額や発注先を開示していたことを認めている(内部報告書15p)。すなわち、関電は、121件の工事の75%に当たる91件で、森山氏に工事概算額などの工事情報を事前に提供していた。内部報告書でも、このような扱いは「契約交渉に悪影響を与えるおそれがある」(同)として、公平・公正に関し疑義を招きかねない行為であると指摘している。独占禁止法19条は、「事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない」と規定する。

 「不公正な取引方法」には、「不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと」「不当に、ある事業者に対し取引の条件又は実施について有利な又は不利な取扱いをすること」などが含まれる。このような行為は、まさに独禁法の禁止する「不公正な取引方法」に当たる違法行為であると考える。

 森山氏が金品提供強く迫る行為は、その後も自分の息のかかった業者に契約を発注するようにとの請託であり、もし契約を発注しなけらば、過去の関電関係者の違法行為をばらすとい脅かしは、不正の請託そのものだ。

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