« 進行する「三権分立」の空洞化 ② | トップページ | 進行する「三権分立」の空洞化 ④ »

2020年4月11日 (土)

進行する「三権分立」の空洞化 ③

続き:

「法の支配」の後退

 一方、2019年11月迄の段階では、官邸の介入に翻弄されてきた法務・検察は、幹部人事を軌道修正するため、定年となる黒川東京高検検事長の後任に、林名古屋高検検事長を据え、次期検事総長へと正常化を図る算段だったようである。

 もともと黒川、林両氏は、同じ法務官僚派ではあるが、黒川氏は傍流であり、林氏は主流派で、政治への立ち位置に決定的な違いがあった。

 林氏は刑事局長時代、黒川氏が再三にわたり失敗していた、組織犯罪等処罰法の改正を成功させ、また改正刑事訴訟法で取り調べの可視化や司法取引等の新たな捜査手法に道を開くなど、時代の変化を先取りしてきた。国策捜査一点張りのために、屈辱的な司法取引で米国の軍需産業の経営者らを刑事免責してまで、日本の首相経験者らの逮捕を優先させたロッキード事件(1976年)の苦杯を忘れた国内派の「特捜検察」から、グローバル・スタンダードと渡り合える国際派の「市場検察」へとウイングを広げるという、重い「使命」を担うはずであった。

 IR汚職から現職閣僚の公職選挙法違反、安倍首相までも絡む政治資金規正法違反疑惑まで、事件捜査が次々と政治問題化する中で、黒川氏続投へと潮の目が大きく変わったのは、やはりゴーン逃亡事件だったように見える。

 ただ、官邸の政治介入で黒川氏が続投しても、次期検事総長は、黒川か林かの法務官僚派からの起用は変わりなく、特捜検察はさらに後景に退くことになる。「法の支配」を旨とする法務・検察が政治の風下に晒されることになった。

 「法の支配」の貫徹をめぐっては、戦後「法務官僚派 vs.特捜事件派」時代が長く続いた。時には政治の圧力に屈した上層部に反発し特捜検事から弁護士へと立場を異にした、いわゆる”ヤメ検”を何人も見てきた。だが、安倍政権のこの7年余の間に、「政治派 vs.中立派」へと法務・検察の秩序感覚はすっかり変容した。

 2月開かれた「検察長官会同」で、雛壇に居並ぶ黒川高検検事長らを前に、中立派とされる静岡地検の神村昌通検事正が、検察庁法が定めた、法相の「指揮権発動」についての条文を読み上げ、「このままでは検察への信頼が疑われる」と直言したという。だが、その後の幹部連中の沈黙ぶりを見ていると、それも虚しく響くだけだったようである。

« 進行する「三権分立」の空洞化 ② | トップページ | 進行する「三権分立」の空洞化 ④ »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事