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2020年4月 4日 (土)

外資がこじ開けるカジノ市場 ②

続き:

 

トランプ大統領とカジノ資本

 カジノに「トランプ・安倍関係」が絡むことは米国のメディアが指摘している。ネットメディア「プロパブリカ」は、安倍首相の2017年2月訪米の際、トランプ大統領がカジノ大手のラスベガス・サンズ(以下、サンズ)の名前を挙げて日本参入を働きかけたと報じた(2018/10/10)。サンズの会長シェルドン・アデルソン氏はトランプ大統領の大口献金者として有名。プロパブリカによると、首脳会談を終えた安倍首相はトランプ氏の別荘「マール・ア・ラーゴ」に招かれ、ゴルフや食事で接待された。大統領は突然アデルソン氏のカジノ事業を話題にし、日本での事業認可の検討を求めたという。

 アデルソン氏は米国のカジノ資産のキーマン。一代で富を築いたユダヤ系ビジネスマンで、トランプ大統領の娘婿クシュナー氏と親交が深く、大統領選挙では2000万ドル(22億円)を寄付、大統領就任式には500万ドルを提供。安倍首相がトランプ氏の大統領就任前に面会できたのは、アデルソン氏の仲介があったからとも言われている。

 面会は2016/11/17、トランプタワーで行われた。そして12月15日には衆議院本会議でIR推進法案(カジノ法案)が強行採決。それまで、審議未了・廃案を繰り返し、店晒しになっていたカジノ法案は、一転して力ずくの成立だった。「トランプタワーの密約」を疑う憶測が広がっている。

 2017年2月首脳会談は前記の通り。アデルソン氏は動き出す。9月には大阪を訪れ、松井一郎知事(当時)、吉村洋文市長(当時)と会った。取り囲んだ記者団に、「カジノ面積の上限規制撤廃」を訴えた。政府は有識者懇談会を受けて床面積に上限を設けることにしていたが、「これではベストなIRはつくれない。投資額を減らすことになる」と批判。後に政府は「面積上限」を取り払い、「カジノはIR施設全体の3%以内」に変えた。

 ラスベガス・サンズの広報は、日本の政治家への働きかけについて「カジノ業界は日本市場でビジネスができるよう多年にわたりロビー活動に資金を注いできた。当社も同様の活動に取り組んでいる」とプロパブリカに答えている。

 2019年6月、ちょっとした波乱が起きた。サンズの戦略担当のジョージ・タナシェビッチ氏が「ターゲットを大阪に一本化する」と産経新聞に表明した。サンズは首都圏の本命とみられていただけに衝撃が走った。「横浜は態度がはっきりしない。東京は五輪で手一杯。大阪は府市共に姿勢が明確だ」と述べた。横浜の林市長は住民の反対などを気にして乗り気薄だった。そこにサンズは「ぐずぐずしていると大阪と組むぞ」と言わんばかりの警告を発した。カジノ受け入れを市長が発表すると、アデルソン氏は声明を出した。「大阪から撤退し、東京・横浜の首都圏に注力する」。

 カジノ資本が日本上陸を急ぐ背景に「米中激突」が絡んでいる。マカオはラスベガスの4倍の規模で、サンズ、MGMリゾーツ、ウィン・リゾーツの3社が進出し大儲けしている。2022年に免許の更新期を迎えるが、マカオ行政庁は2018年、自動更新はせずゼロベースで審査するとの方針を打ち出し、業界に激震が走った。

 更新できなければホテルや劇場などIR全体が立ち枯れになる。トランプの支援者が営むカジノを人質に取る北京政府の戦略とも?米中交渉は不確定要素が多い。免許失効リスクに備え、マカオで遊ばせている顧客の「受け皿」を必要とする。3社は、日本の「3枠」に熱い目線を注いでいる。業界では「大阪はMGM、首都圏はサンズ」という予想がもっぱらだ。

 

菅官房長官のお膝元

 政府でカジノを所管するのは内閣官房のIR整備推進本部。本部長は安倍総理だが、実質的な仕切り役は菅官房長官である。規制のさじ加減や自治体選びなどは菅氏が握っていると言われる。カジノ誘致は東京から始まったが、猪瀬、舛添と続いた都知事の迷走でカジノどころではなくなり、間隙を縫って菅氏が乗り出した、と自民党内では語られている。制度の根幹を差配する官房長官、横浜を選挙区とする政治家という2つの立場を兼ねる権力者の尻を外資が叩く、という構造に今の日米関係が投影している。

 安倍政権は米国から農産物の市場開放を迫られているが、カジノも「市場開放」が迫られている。政府や国会がカジノ誘致をしているように見えるが、アメリカの要求に沿って動いていると見た方が分かりやすい。首脳会談で圧力をかけて、自分の選挙に都合のいい決着を目指すところがトランプ流である。

 アデルソン氏は「1兆円の投資をする」と宣言して自治体や経済界を喜ばせるが、1兆円投資するのは、1兆円以上の回収が日本でのIRで期待できるからこそなのだ。―――狙われているのは日本国民の懐である。

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