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2020年4月18日 (土)

Clinical リハビリテーション栄養における医科歯科連携の重要性 ⑥

続き:

7. サルコペニアの摂食嚥下障害の診断

 サルコペニアの摂食嚥下障害の診断には、信頼性、妥当性が検証された診断フローチャートが有用である図(略)。

 診断では、最初に全身のサルコペニアの有無を評価する。全身のサルコペニアを認めない場合には、サルコペニアの摂食嚥下障害とは診断しない。

 次に、明らかな摂食嚥下障害の原因疾患の有無を評価する。例えば、脳卒中が存在して、摂食嚥下障害の原因が脳卒中だけと考えられる場合には、サルコペニアの摂食嚥下障害とは診断しない。しかし、陳旧性脳梗塞で軽度の摂食嚥下障害を認めていても3食経口摂取可能だった患者が、誤嚥性肺炎で入院したとする。1週間後、脳卒中の再発や認知機能悪化を認めていないのに、摂食嚥下障害が重度となることがある。この場合には、重度の摂食嚥下障害となった原因はサルコペニアの可能性が高いため、フローチャートから除外しない。

 最後に嚥下関連筋群の筋力評価として、舌圧を測定する。嚥下関連筋群の筋力低下は、舌圧が20kPa以上か未満かで評価する。舌圧低下を認める場合には、サルコペニアの摂食嚥下障害の「可能性が高い」と判断。一方、舌圧低下を認めない場合および機械無いなどの理由で舌圧測定が困難な場合には、サルコペニアの摂食嚥下障害の「可能性あり」と判断する。

8. サルコペニアの摂食嚥下障害の予防と治療

 サルコペニアの摂食嚥下障害の予防と治療には、リハ栄養の考え方が有用である。リハでは、嚥下関連筋や全身のレジスタンストレーニング(局所、全身の筋群負荷を与え、筋機能の向上に主眼を置くトレーニング)、呼吸訓練、歩行訓練などを含めた摂食嚥下リハと栄養改善を併用する。嚥下関連筋のレジスタンストレーニングには、嚥下おでこ体操(おでこに手を当てて抵抗を加え、臍部を覗き込むように強く下を向く)や、舌筋力増強訓練などがある。これらに全身のレジスタンストレーニングや歩行訓練を併用する。

 栄養改善を目指した栄養管理では、エネルギー蓄積量を考慮する。例えば、1か月後に体重1kg増加をゴールと設定した場合、1日エネルギー必要量=1日エネルギー消費量+1日エネルギー蓄積量(250kcal)と設定する。理論的には、7000kcal程度エネルギーバランスをプラスにすると、1kgの体重増加を得られる。これより、1日エネルギー蓄積量を250kcalにすると、30日で7500kcalとなり約1kgの体重増加を期待できることになる。しかし、高齢者の体重を実際に1kg増加させるには、8800~22600kcalが必要という報告もある。そのため、栄養モニタリングでゴール設定どおりに体重増加が得られているかを確認して、それが不十分な場合には1日エネルギー蓄積量を増加する。なお、前述のサルコペニアと摂食嚥下障害のポジションペーパーでは、約35kcal/kg理想体重として体重増加を目指した攻めの栄養管理で、サルコペニアの摂食嚥下機能が改善した事例が紹介されている。ただし、エネルギー蓄積量を考慮した攻めの栄養管理を行えるのは、リフィディング症候群(慢性的な栄養障害がある状態に対して、急激に栄養補給を行うと発症する代謝性の合併症)のリスクがなく、かつ、がん等による終末期ではなく、高度の炎症も認めない場合であることに留意する。

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