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2020年4月13日 (月)

Clinical リハビリテーション栄養における医科歯科連携の重要性 ①

若林秀隆(横浜市立大学附属市民総合医療センターリハビリテーション科准教授)さんの小論文を載せる。コピーペー:

 

はじめに

 超高齢社会の日本では、口腔機能や摂食嚥下機能に低下・障害を認める方が増加している。口腔機能低下や摂食嚥下障害は、全身のサルコペニア、低栄養と関連を認める。そのため予防や治療には、口やのどへのアプローチだけでなく、全身へのアプローチの併用が必要。

 リハビリテーション(以下、リハ)栄養とは、フレイル高齢者や障がい者の生活機能とQOLを、リハと栄養の両者の介入でできるだけ高める取り組みである。質の高いリハ栄養の実践には、歯科だけでも、医科だけでも不十分であり、医科歯科連携が欠かせない。本稿では、医科歯科連携の重要性、リハ栄養、リハ栄養ケアプロセス、サルコペニア、サルコペニアの摂食嚥下障害、日本リハビリテーション病院・施設協会での医科歯科連携推進委員会の取り組み、回復期リハビリ病棟での歯科衛生士について紹介する。

 

1. 医科歯科連携の重要性

 臨床で筆者(若林)が医科歯科連携の重要性を実感したのは、2003年である。当時、勤務していた病院で嚥下チームと口腔ケアチームを立ち上げた。口腔ケアチームでは週2回、歯科衛生士とリハ科医師(若林)が一緒に回診して、口腔状態の悪い患者に歯科衛生士が口腔ケアを実施する体制を作った。リハ科医師の業務は、口腔ケア回診の対象となる患者の選定と歯科口腔外科への併診と、回診時の歯科衛生士のサポートとした。その結果、口腔状態が顕著に改善して口から食べられるようになる患者を数多く目の当たりにした。この経験から、医科歯科連携の重要性を強く実感した。

 研究で若林が医科歯科連携の重要性を実感したのは、2015年だ。要介護高齢者を対象に、咬合支持、摂食嚥下障害、低栄養、ADL (Activities of Daily Living : 日常生活動作)要介助の関係を横断研究、パス解析で検討した。対象は要介護高齢者354人(男性118人、女性236人、平均年齢83歳)であった。ADLの自立度を示すBarthel inndexの中央値は30点で、歩行困難な方が大半だ。咬合支持の有無は、義歯の有無にかかわらず左右の大臼歯域、小臼歯域ですべて咬合支持がある(アイヒナー分類でA)の場合に咬合支持ありとした。それ以外の場合には咬合支持なしとした。パス解析の最終結果を図面がある(略)。

 咬合支持がないと、摂食嚥下障害を認めることが多かった。摂食嚥下障害を認めると、低栄養とADL要解助であることが多かった。そして低栄養を認めると、ADLがより要介助であった。老人保健施設入所者は、急性期病院や地域在宅の高齢者と比較して、咬合支持がないことが多く、ADLがより要介助であった。以上より、義歯を作製して咬合支持を整えることで、直接的には摂食嚥下障害、間接的には栄養状態やADLをより改善できる可能性が示唆された。この研究結果から、医科歯科連携の重要性を強く実感した。

 これらの経験から、医科の総合診療・家庭医療でも医科歯科連携が重要であることを、Editorial論文として執筆した。しかし実際には、医科歯科連携の実践と知識は不十分である。歯科医師側は医科歯科連携の推進に関心を持っていても、多くの総合診療医が医科歯科連携必要性を感じていないという報告もあった。そこで医師と歯科医師の連携が重要なことは言うまでもないが、歯科衛生士が医師と歯科医師の連携を促進する可能性があることを述べた。

 

 

 

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