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2020年4月29日 (水)

原子力ムラの癒着と不正その責任を問う ⑥

続き:

検察トップが不起訴にしようとも

 3000人を超える市民による告発は、大きなインパクトがあった。現在、但木敬一元検事総長らで構成する第三者委員会による調査が進んでいる。第三者委員会には大手法律事務所に所属する多数の弁護士がかかわり、徹底した事実調査を展開していると伝えられる。2019/12/15、には委員会は記者会見を開き「当初思っていたより広がりがある」「金銭授受がどういう結果、影響を及ぼしているのかに関心がある」などのコメントが示された。

 2019/11/27、私(海渡雄一)たちは関電の株主を代理して、関電に対して八木前会長や岩根社長など5人に54億円余りを賠償させるための裁判を起こすよう請求する提訴請求書を送った。これに対して2020/01/24、関電は、第三者委員会の調査報告書が提出された段階でこれを精査し、弁護士の助言も得ながら、最終的な判断をすると回答してきた。2020/02/06、の各紙報道では、第三者委員会は3月に報告書を関電へ提出する方向とされる。関電はこの報告書を受け、旧経営陣らの責任を追及する新たな委員会の設置を検討するとされている。旧経営陣を提訴する可能性もあるとされ、この時点で岩根社長は速やかに辞任するとされている。金品の受領が工事情報の提供や発注といった経営上の意思決定にどのような影響を与えたかの解明が焦点となっているようだ。

 第三者委員会の報告内容も期待できるが、強制捜査権を持たない第三者委員会の調査にはおのずと限界があるだろう。この事件の徹底した真相解明には、検察による刑事事件としての立件が不可欠である。この操作が実を結び、事件を検察の手で起訴に追い込めるかどうかは、今後の検察当局と政治権力との関係にも大きく左右され、現在問題となっている検事総長人事から目が離せない。今後の捜査の課題を指摘しておく。

 第一に、森山氏からの金品の流れを究明するには、森山氏の手もとに保管されていたはずの、関電役員との経緯を記した森山メモを入手することが不可欠である。第二に、工事発注金額が適正であったかどうかを判断するには森山氏の関連会社への発注額と外部(下請け)への再発注の差額等を明確にする必要がある。第三に内部報告書(4p)には、「(森山氏が)高浜3・4号機増設時に関電経営トップと何度も面談し、増設に関して依頼を受けたと話していた」と記載されている。関電と森山栄治氏の間における30~40年の長期にわたる不正常な関係の全容解明が必要不可欠であることがわかる。第四に、これらの金品の流れを詳細に明らかにするために、森山氏と吉田開発、柳田産業の銀行口座の取引履歴の捜査が不可欠である。

 これほど明白な特別背任、会社役員収賄が、立件できなければ、検察の威信は地に堕ちてしまうことだろう。福島第一原発事故によって死傷者が出たことについて東電の元役員らが業務上過失致死傷罪に問われている刑事裁判は、検察トップの手により、いったん不起訴となってしまったが、一線の捜査検事のみなさんによる血のにじむような捜査の記録を、検察審査会と強制起訴後の指定弁護士の力によって社会的に明らかにすることができた。東電以上に腐敗を深める関電の不正還流事件についても、勇気ある第一線の捜査検事のみなさんが巨悪を眠らせないために、原子力の深い闇に切り込む捜査を敢然と遂行し、検察に対する市民の信頼を回復されることを祈念する。

 もし仮に、安倍官邸の任命するであろう新たな検事総長の指揮によって、事件が不当にも不起訴に終わったとしても、きちんと捜査がなされ、証拠が集められてさえいれば、私たちは検察審査会の市民の手を借り、必ずや事件を強制起訴へと追い込むことができるだろう。関電と原子力ムラの闇を白日の下に明らかにするために、捜査検事も、第三者委員会も、市民も、ジャーナリストも、ともに各自の持ち場で全力を尽くすことを誓い合うこととしよう。

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