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2020年4月 2日 (木)

Science~緑茶由来カテキンを応用した新規骨再生材料開発~⑥

続き:

 

7. カテキンゼラチンの抗炎症効果、酸化ストレス抑制効果、破骨細胞抑制作用

 EGCGは単独使用において、抗炎症作用、抗酸化作用、免疫調整作用が報告されているが、ゼラチンお結合したEGCGでもこれらの機能を示すのだろうか。筆者らは近年、EGCGはゼラチンへ修飾されていても周囲組織からの活性酸素の分泌を抑制することを明らかにした。

 さらに、活性酸素は炎症を増強し、ゼラチン分解酵素(マトリックスメタロブロテアーゼ)の発現を高めることが知られているが、vhEGCG-GS周囲ではマトリックスメタロブロテアーゼの発現が低下していた。同効果は、細胞の足場として働くゼラチンの急速な分解を抑制し、スペースメイキングや、細胞遊走、細胞分化の足場を提供するなどの側面から、vhEGCG-GSの骨形成向上につながっていたと考えられる。また、スポンジ状としての応用ではないが、EGCG結合ゼラチンを溶液として用いた場合、マクロファージの抗酸化酵素の遺伝子発現を向上し、リポポリサッカライド (LPS)誘導性の破骨細胞の形成を阻害するなど、免疫細胞にも機能することを明らかにしている(同研究は、鶴見大学歯科矯正学講座・菅崎弘幸准教授らとの共同研究である。特願 2017-062656)。本内容は、歯列矯正後の後戻りの防止や、リウマチによる骨融解、細菌誘導性の骨吸収抑制への応用が期待でき、研究を進めているところである。

 以上のように、カテキン結合ゼラチンは環境を整える多様な効果を持つが、EGCG本来が持つ多機能性を考えると、さらなるメカニズムを具備している可能性も考えられる。現在、それらのメカニズム解明も幅広く進めており、その一部では骨形成に関わる知見も得ていることから、今後報告を行う予定だ。

 

おわりに

 ふと書店において目に留まった『世界を変える100の技術』を購入して読んでみると、ビジネスパーソンが2030年に期待する技術として再生医療が上位にあげられるなど、再生医療に対する社会からの期待は極めて高い。本稿では、主に前半で組織再生向上に向け細胞外環境を整えることの重要性を記載した。そして、後半は植物由来物質の潜在能力、そして、カテキン結合ゼラチンの紹介だった。

 筆者らは主に飲料やサプリメントの成分としての応用が主であった多機能のEGCGに材料学的考えを持ち込み、EGCGに高分子を結合させるという一工夫を施し、細胞外環境を調節しうる新たな再生材料として開発に取り組んでいる。これまでのカテキン研究においては、高分子と結合させるという視点が珍しかったと伺っており、本材料はお茶の研究で長い歴史を持つ茶学術研究会や、カテキン学会からユニークなカテキンの応用研究として取り上げていただいた。しかし、カテキン結合ゼラチンが将来的に臨床応用まで到達できるかは残念ながら今のところ全くの不明である。

 現在はより最適な骨再生能、周囲環境制御能を探すため小動物でのスクリーニングを進めている段階。臨床応用に向かうためには、大型動物での確認実験は避けられず(むしろ大型動物実験からが本番となる)、死の谷(開発段階から事業化への大きな関門)を越える必要があるなど、困難な道のりが待っている。

 しかしながら、費用対効果に優れた同材料は改良が容易で、多くのトライアンドエラーを行える環境にある。さらに、本研究で用いた水中合成法h、環境に優しく、なおかつ同様の手技を応用することで他の薬剤や高分子に交換することも容易。先達の先生方が、様々な苦労を一歩一歩突破して再生材料の臨床応用へと辿り着いたように、頑健な基礎実験をベースとして、道のりは遠いが、いずれ本材料が臨床応用に到達できるよう、チーム一丸となって研究を進めているところである。

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